ラブロフ外相、学生の質問に答える

普段、テレビは見たくないので、あまり見ませんが、それでもたまに見ていると、最近のタレントさんは「美味しい」とか「うまい」とか言って内輪の世間話をしていれば仕事になるようです。私はテレビの音そのものが嫌いなので家の誰かがテレビをつけていてもそっと離れます。それでも、どんなニュースやっているんだろうと見ることがあります。ふ~ん、そうなんだ。次第に具合が悪くなって消します。ニュースにしろ娯楽番組にしろ、こんなの本心から見たくて見たい人がいるのだろうか?と思ってしまいます。テレビつけるとこんなのしかやっていないので仕方なくでしょうが、正直な話、時間の無駄づかいだと思います。

見てる人を批判したくて言っているわけではありません。洗脳を目的として放送しているということに気がつかないで、何気なく見ていると簡単に洗脳されてしまいますよと言いたいだけです。

さて、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相がエフゲニー・プリマコフ学校の卒業生の質問に答えた記事がロシア外務省のサイトに掲載されていました。11年生というのは日本で言えば高校卒業くらいに当たるのでしょうか。この中でラブロフ外相は個人的なエピソードやロシアの基本的な外交姿勢について説明しています。以前から、ラブロフ外相の発言には注目していたので、個人的なエピソードも披露されており、いい機会だと思い訳してみました。(強調部分はこちらで付けました)

目次

プリマコフ学校でのラブロフ外相の発言と質問に対する回答

ラブロフ外相

23 May 2022 22:56
Foreign Minister Sergey Lavrov’s remarks and answers to questions as part of the 100 Questions for the Leader project at the Yevgeny Primakov School, Moscow, May 23, 2022
1091-23-05-2022

2022年5月23日、モスクワ、エフゲニー・プリマコフ学校での「リーダーへの100の質問」プロジェクトの一環としてのセルゲイ・ラブロフ外相の発言と質問に対する回答。

※ エフゲニー・プリマコフ学校は、2017年9月にモスクワに開校し、ロシア語と英語のふたつの言語で完全な教育サイクル(就学前の準備を含む)が行われる最初のロシア語学校。ロシア外務大臣のセルゲイ・ラブロフとモスクワ州知事のアンドレイ・ヴォロビョフは、知識の日に、郊外の村ストライフ・オジンツォボ地区にエフゲニー・プリマコフにちなんで名付けられた学校を開設した。
(エフゲニー・プリマコフは1996年から1998年に外務省を率いた)

※エフゲニー・プリマコフ:ロシア連邦首相時代エリツィンファミリーの汚職摘発を敢行。プーチン大統領は「プリマコフ外交のおかげで、ロシアは世界の敬意を取り戻した」と称えた

お会いできてうれしいです。私がここを訪れるのは頻繁ではありませんが、定期的に訪れています。そして、毎回、元気をもらっています。
明日、11年生の生徒たちは人生の進路を選択しなければなりません。残りの皆さん(8~10年生)も、同じ敷居に立つことになるのは、そう遠くないことでしょう。

皆さんの就職やキャリアの決め手となる専門職の動向の枠組みの中で、自分の人生の中身、これからの社会の中身を理解することが重要です。私は、学校での学生との面談に加え、MGIMOの学生とも定期的に面談しています。彼らは、実践的な政治に携わる人たちを飽きさせません。政策立案は、後継者が見通しを立て、先人が描いたコースが自分たちの利益に合致していることを理解できるような形でアプローチする必要があります。

※ MGIMO:ロシアで最も尊敬されている教育機関であり、幅広い教育プログラムと専門分野を備えている

質問:私の知る限り、あなたは詩を書いていらっしゃいますね。そのきっかけは何だったのでしょうか?

セルゲイ・ラブロフ:以前は詩を書いていました。大臣に就任してからは、友人の誕生日に贈る歌や小品にとどまっています。でも、たまには長編も書いています。詩を書き始めたのは、15歳くらいのときです。学校では、思いつきで…… その後、研究所では、学生建設旅団(休暇中に働く大学やその他の高等教育機関の学生で構成される一時的な建設チーム)の全国運動に仲間と参加し、毎年夏にはロシアのどこかに働きに行きました。その時、広大な祖国のどこかしらに捧げる歌が、私の頭の中に浮かんできました。

アンドレイ・ヴォズネセンスキー(『百万本のバラ』のロシア語版を作詞した。詩人、作家)は言いました。
「詩は書かれたものではなく、感情や日没のように起こるものだ。魂は盲目の共犯者だ。私が書いたのではない、ただ起こったのだ」と。

質問:あなたの先輩であるロシア帝国外相アレクサンドル・ゴルチャコフは「大国は承認を必要としない」と言っています。この言葉は現代でも通用するのでしょうか?

セルゲイ・ラブロフ:そうだと思います。情報技術などの技術が進歩し、新しいものが出てきても、人間の本質は変わりません。人間は常に自分の利害を守ろうとします。強靭で、目的意識が高く、ある程度頑固であれば、それを受け入れてもらえるような地位を得ることは容易でしょう。

国も同じです。しかし、国が大きく豊かで、先祖の歴史を知り、愛し、継承していく国民がいれば、より顕著になります。アレクサンドル・ゴルチャコフ(帝政ロシアの政治家、外交官、貴族)は、このことを意識していたのでしょう。ロシア帝国、ソビエト連邦、ロシア連邦は、その領土の広さでは世界最大の国家です。伝統のある国です。他国ではなかなかお目にかかれないものです。
私は、多民族・多宗教の国民のことを指しています。他の帝国と違って、ロシア帝国はその影響力を広げる際に、他の民族を自分たちの美的・道徳的要求に屈服させることはしませんでした。彼らは皆、自分たちの言語、信仰、伝統を守りました。帝国の各地域は、共通の仲間になった民族の特徴を反映し、異なる地位にありました。
アメリカは違います。アメリカには “(人種・文化などの)るつぼ" があります。すぐにみんな溶けてしまい、全員がアメリカ人になりました。私の友人が言ったように「私たちは皆、額に “人権" と書かれたアメリカ人なのです」。
私たちの国を構成する幅はもっと豊かです。領土や天然資源と並ぶ国の財産です。

ソ連が誕生してからのゴルチャコフの予測の運命はというと…… ソ連も何年かは認められませんでした。その後、承認されました。それは、消えない現実、作られた現実だったのです。誰もがそのことを認識するようになりました。
今、他国がロシア連邦に国際法ではなく ”ルール” に従って生きることを強要しようとしているのも同じことです。西側諸国は数年前からこの言葉を発していません。"ルールに基づく秩序" を守るよう、みんなに呼びかけているのです。誰もこの"ルール"を見たことがないし、その考案に参加したこともありません。
なぜ彼らは国連憲章として知られるルールに不満なのか、という我々の論理的な質問には答えられません。しかし、私たちはその答えを知っています。そして、この答えは彼らにはそぐわないのです。なぜなら、彼らはある瞬間、あるいは別の瞬間、自分たちの都合の良いようにすべてのルールを裏返しにするからです。
ユーゴスラビアを破壊したいがために、彼らはコソボを承認しました。彼らによれば、これは人民の自決権です。しかも、コソボは住民投票を行いませんでした。さらに、国際司法裁判所に「領土の独立宣言には、必ずしも中央政府の同意は必要ない」という判決を出させたほどです。

ウクライナの反憲法クーデターでは、2014年まで法律で定められていたロシア語の地位を廃止し、クリミアからロシア人を”追い出す”必要があるとする人々が権力を握りました。
これに対し、クリミアの住民は公開で透明性のある住民投票を行い、圧倒的多数がウクライナからの独立とロシアへの加盟に賛成しました。西側諸国はこれを認めていません。
国民の自決というルールは同じように見えますが、西側諸国は今回、異なる立場を採用したのです。

今、西側諸国は、ロシアがその絶対的に正当で基本的な利益を擁護しているとして激怒しています。ロシアは、NATOがその約束に反して5回にわたって東方へ拡大し、わが国の国境に近づいたとき、そのたびに安全保障上の利益が影響を受けていることを明らかにしました。また、ウクライナや他の旧ソ連邦を同盟の一員とすることは、我々にとってレッドラインであることを明確にしました。
米国や他のNATO諸国がウクライナに武器を配備し、近代的な武器を流し、軍事・海軍基地を作ったとき、私たちは何をしたのか知っていると言いました。クーデター後、キエフ新当局はドンバス住民の意思を力で押さえ込もうとしました。クーデターの結果を受け入れないドンバスの人々は、テロリストと認定されました。
実際、彼らがしたことは、クーデターだと認めず、そのままにしておいて、彼らは自分たちで物事を解決するように仕向けたのです。彼らは誰も攻撃しておらず、代わりに攻撃されたのです。

キエフの新政権は、この大虐殺が無意味であることに気づくのに1年かかりました。ミンスク協定が結ばれ、キエフに支配されていない領土は特別な地位を与えられ、母国語(ロシア語)を使用する権利を持ち、独自の法執行機関を持ち、近隣のロシア地域と特別な経済関係を持つべきであるということが、端的に示されたのです。
8年という長い間、NATOの同僚たちに、東進してウクライナを取り込んで飲み込もうとしないよう注意を促すとともに、キエフにミンスク合意を遵守する必要性について強いメッセージを送ってもらおうとしたのです。無駄なことだが。
諺にもあるように、レンガの壁に向かって話しているのと同じかもしれない。欧米はただうなずいて、和解の達成に貢献しようとしているふりをしただけでした。実際には、大統領や閣僚を通じてミンスク合意を遵守しないと公言したキエフ政権の傲慢な姿勢を後押ししていたのです。

NATOは拡大し、キエフはミンスク協定の遵守を拒否し、その上、ウクライナの議員たちは毎年、教育やメディアにおいてロシア語を非合法化していました。テレビ局(ロシア語とウクライナのものをロシア語で放送)も閉鎖されつつありました。直近ではさらに別の法律が改正され、日常生活でロシア語を使うことが違法とされました。店の係員と話すときに、国語であるウクライナ語ではなく、ロシア語を使うと、行政上の責任を問われる可能性があります。

また、ヒトラーに協力し、ニュルンベルク裁判で犯罪者と認定された人々の美化、聖火行列の奨励、ナチのシンボル(鉤十字、武装親衛隊 死のヘッドユニット大隊・連隊・師団の記章など)の使用、ネオナチ思想の精神で戦闘員を訓練・育成するために欧米の指導者を雇った国家大隊の創設など、ネオナチの理論や実践を促す法律も存在しました。
私たちは、国境で生み出される一連の脅威を目の当たりにしたのです。長年にわたり、私たちは西側諸国のパートナーにこのことを認識させようとしてきました。しかし、彼らはそのことに何の関心も示しませんでした。

2009年以来、私たちは、NATOや他の軍事・政治同盟を拡大することなく、ウクライナを含むすべての国の安全を保証する特別条約の締結を繰り返し提案してきました。
2009年、彼らはそれを拒否しました。
2021年、プーチン大統領が再びこの構想を打ち出し、私たちは米国とNATO加盟国に条約案を送りました。しかし、ここでもNATOの拡大以上の安全保障を拒否されました。私たちにとって、それは受け入れがたいことでした。彼らはそれを十分承知していたのです。

ロシア連邦の安全保障に対する物理的、文化的な脅威はいくつも挙げることができます。ウクライナの法律は、同国の人口の膨大な割合の人々が母国語を使用し、子供たちをロシアの文化習慣やロシア語で育てることなどを禁じています。その結果、長年にわたってウクライナに警告を発してきた私たちは、ドンバスに住むロシア人の安全保障上の利益を守るために動き出しました。
西側の同僚たちがどのような反応をしているのか、私たちは見ることができます。彼らは、国連憲章に明記された、国家の主権的平等を基礎とする国連憲章の規定に従って生活することができないことを認めています。彼らにとって、これは自国の主権だけを意味します。

私は、西側諸国がロシアにとって脅威となることを考慮し、私たちがどれほどの期間、西側諸国の同僚に手を差し伸べようとしたかを説明しました。
例えば、米国は自国の国境ではなく、海を1万キロメートルも隔てたユーゴスラビアに突然、脅威を感じたのです。アメリカはユーゴスラビアを爆撃し、コソボを作り、ヨーロッパのこの地域に自分たちの認識を押し付けました。その後、アメリカはイラクに同様の脅威を感じ、この国が大量破壊兵器を保有していると言いました。そして、イラクを爆撃し、何十万人もの市民が殺されました。2003年の作戦は、アメリカとイギリスが中心になって行いました。
数年後、イラクに大量破壊兵器は存在しなかったことが判明しました。当時の英国首相トニー・ブレアは、これを ”間違い” と呼び、「間違いは時々起こるものだ」と付け加えました。彼らは、いまだに国家としての地位を復活させられない国を破壊したのです。
その後、地球の反対側に位置する米国は、リビアの人権状況があまり良くないという印象を持ったようです。米国は、貧困層がなく、経済も盛んな豊かな国を空爆しました。そう、リビアは権威主義(独裁主義)的な政権が支配していたのです。それを打倒するために、アメリカはその権威主義政権の影響を受けた人たちよりも何十万人も多く殺しました。今日、リビアはもはや国家ではなく、いくつかの政治的、軍事的勢力が存在する領土です。みんな自分のためにある。

誰かが自分たちを脅かしているという印象を受けたとき、彼らは誰にも何も説明せず、誰かに行動を求めることもありません。イラクやシリアでやったように、ただ決断し、軍隊を配備し、都市を平定する。それが彼らのルール" です。

私たちは今、再び歴史の中で同じような時を経験しています。ロシアを倒さなければならない、ロシアを倒し、ロシアが戦場で負けるのを見届けなければならないと言います。
このような “呪文(決まり文句)“を唱えている欧米の政治家よりも、あなたたちの方が歴史を知っていると確信しています。彼らは学生時代、成績が悪かったのでしょう。彼らは、過去とロシアの本質を理解した上で、誤った結論を導き出しています。

私は、このようなことはすべて終わると確信しています。西側諸国は、現場で作り出される現実をもう一度認識し、ロシアの重要な利益とロシア人ディアスポラの利益を、どこに住んでいようと、常に踏みにじり、それを逃れることは不可能であることを認めざるを得なくなるでしょう。
英国の一部である北アイルランドで、アイルランド島との統一を望む政党が選挙に勝利したため、彼らは今アイルランドのことをよく話しています。そこで突然、英語を禁止したらどうなるのか?
ウクライナではロシア語を禁止したが、北アイルランドで英語を禁止したらどうなるのだろう?
ベルギーがフランス語を禁止したら、フィンランドがスウェーデン語を禁止したら?
想像もつかないことです。しかし、欧米は、まるでそれが当たり前であるかのように、すべてを ”飲み込んで(うのみにして)” しまう。

私たちはOSCE、欧州評議会、国連人種差別撤廃委員会の門をたたきました。彼らは「深い遺憾の意を表明」したが、クーデターによって政権を握った超国家主義者が行き過ぎた挙句に、人権及び基本的自由の保護に関する条約で求められているロシア語を話す少数民族(ウクライナ国民の大多数はロシア語を話す)の権利侵害を止めるよう足並みをそろえることができませんでした。

欧州の言語を侵害することなど考えも及ばない欧米のルールです。さて、ウクライナ人は西側に ”忠誠を誓い”、言われたことを疑うことなく実行するので何でもできます。

彼らは現実を容認しています。それを回避することはできません。私たちは、すべての西側諸国が署名した条約に従って、ロシア語を話すロシア人(どこに住んでいようとも)の権利を保護するよう働きかけていくつもりです。私たちは、ソビエト連邦が消滅した後、長年にわたってそうであったように、ロシアの安全保障上の利益が無視されないよう主張します。NATOは一歩も動かないと私たちの前で嘘をつきました

質問:フランスの政治家、シャルル・ド・ゴールは「人は友人を持つことができるが、政治家は持つことができない」と言いました。これについてはどう思われますか?

セルゲイ・ラブロフ:偉大なフランス人であるシャルル・ドゴールがこの言葉を発したとき、彼は同じ人物を念頭に置いていたことはほぼ間違いないでしょう。

どんな職業であれ、どんな人生を歩んでいる人であれ、友人を持たなければなりません。友だちがいないのは不自然なことです。政治家が友人と集まったら、もう政治家ではなくなります。彼らにとっては、友人であり、同級生です。少なくとも私は、学生時代の同級生、学生時代の建設チーム、シベリアの川を下った仲間に会うと、そう思います。私は、彼らと一緒に大臣になるわけではありません。私が聖職者を装ったところで、彼らには理解できないでしょう。私たちは友人であり、それがすべてです。

質問:あなたには夢がありますか? ない場合は、以前はありましたか? それは実現しましたか?

セルゲイ・ラブロフ:それについては、短い答えを出すこともできるし、延々と話すこともできます。人は成長の各段階において、何かを成し遂げたいと思うものです。学校を卒業し、大学に行き、面白い仕事に就くのは良いことです。それを夢と呼ぶこともできます。あるいは、人が目標を立て、それを達成するために努力するのは当たり前のことだという前提で動くこともできます。

ロマンチックな夢といえば、人は、かないそうもない夢を持つことができます。夢見ることは悪いことじゃない。ただ、自分の興味やなりたい自分を知り、その目標に向かって進んでいけばいいのです。プリマコフ・ギムナジウムの卒業生には、他の教育機関の卒業生よりも多くのチャンスがあります。誰の気持ちも傷つけたくはないけれど、あなたたちの学校は素晴らしい教育機関です。

質問:今まで聞かれたことがないけれど、答えてみたい質問はありますか?

セルゲイ・ラブロフ:そのような質問はありません。しかし、だからといって的を得ていないわけではありません。私は、何か特定の質問に対して答えを出したいと思ったとき、その質問をされるように仕向けます。難しいことではありません。ジャーナリストと友達になればいいのです。

質問:3月か4月から国連安全保障理事会におけるロシアの拒否権を制限することについて話しているようです。国連人権理事会からも除名されました。国際関係の仕組みはすぐに変わるのでしょうか? それとも、このまま変わらないのでしょうか? 改革すべきなのでしょうか?

セルゲイ・ラブロフ:私たちは自らの意思で人権理事会を去りました。彼らは、私たちをそこから追放するか、加盟を停止するつもりだったのです。私たちは自分たちでそうすることにしました。人権理事会は、ウクライナ情勢が始まるずっと以前から信用を失っていました。

ご存知のように、かつて国連経済社会理事会の下には国連人権委員会がありました。アメリカは、この委員会が ”違反者” に対して十分な積極性を持っていないと考え、批判をやめませんでした。国連総会で選出される国連の最高代表機関である現在の人権理事会の設立は(決定的ではないにせよ)かなりの程度、彼らのアイデアによるものでした。

この理事会の改正法令は、国家の主権平等の原則に基づいており、各国はその人権慣行について定期的に審査を受けることになっています。委員会が作られ、質問がなされ、その国は答えを提供します。誰もが平等に定期的に他国へ報告しなければならないのです。これは、特定の国の実績が公平に考慮されないという問題を解決するように思われました。

欧米はそれだけでは済まないと思っていました。毎回、平等なプロセスを破って、国連人権理事会で特定の国を平然と非難する決議を出してくるのです。これでは、成果を上げるという観点からは何の役にも立ちません。これらの決議の言葉は、無礼で侮辱的なものでした。
もし、自分のアドバイスに耳を傾けてもらいたければ、違うトーンで話をする必要があります。これらは、現代の西洋で採用されているマナーです。これは近代西洋が採用したマナーであり、変えることはできません。

私たちは、自らの意思で欧州評議会を脱退しました。欧州の法的空間の統一に関わる組織から、欧州評議会は米国の利益の道具に堕落してしまいました(米国は欧州評議会のメンバーではなく、単なるオブザーバーであるにもかかわらず)。
この5年間、アメリカ人は国際機関の事務局を私物化する傾向を示してきました。彼らは自国民を指導的地位に置いています。残念なことに、彼らは人事の決定において、各国の投票に影響を及ぼしています。アメリカ人は世界中を駆けずり回っています。国家間の主権的平等とはなんですか?
ロシアは、なぜそのようなことをするのか、と言いました。アメリカや欧米は自分たちの態度を表明しました。なぜ他国が自分たちの立場を自分たちで決めることを許さないのか?
そして彼らはそうしました。実質的に西側諸国以外、どの国も制裁に加わっていません。しかし、彼らは世界中を駆けずり回っています──アメリカも、EU加盟国も、最も奔放な(欲情した)イギリスも──反ロシア制裁に参加するよう各国に促しています。ここで、どんな平等と尊敬が期待できるでしょうか?
ありません!

欧州評議会も同じ道を歩んでいます。この欧州の組織の仕事の中核に常にあったコンセンサス文化を破壊してしまったのです。欧州評議会は常に、関係者全員の利益のバランスを取りながら、相互に受け入れ可能な解決策を見出すことを可能にしていました。西側諸国が関心を寄せる問題は長い間、投票に付されてきました。欧州評議会では、圧倒的な多数決で押し切られました。
欧州評議会におけるEUの行動も興味深いです。EU加盟国で人権問題が発生すると、ブリュッセルはその存在を認めながらも、EUには欧州評議会とは無関係に、EU加盟国が人権公約を守っているかどうかを監督する独自の手続きがあるので心配はない、と言うのです。EUは欧州評議会とは距離を置き、自国のことは自国で管理するが、旧ソビエト連邦共和国(現在は独立国家で欧州評議会のメンバー)については、その行動を注視すると宣言しています。ここに傲慢さと優越感があります。
私の考えでは、彼らは他の多くの組織と同様、欧州評議会を破壊しています。そこでは、平等ではなく、独断、最後通牒、直接的な脅迫に基づいて活動しようとしています。例えば、国連で一定の投票結果を得なければならないとき、西側が必要とするような投票をさせるために、どのような方法をとっているか、同僚から聞いたことがあります。
彼らは、特定の人物(ある国の国連大使)に対して、明日の投票ではこのように投票するとほのめかし、他の人々にも同じように投票するよう呼びかけます。彼らがアメリカの銀行に口座を持っているとか、子供が[アメリカの]大学に在籍しているとかいうことを思いださせます。私は誇張しているわけではありません。そう言ってくれた人たちをたくさん知っています。私は彼らを信じています。

国連安保理については、ロシア連邦を含む国連安保理常任理事国すべての批准が必要な決定が採択されない限り、誰も何も変えることはできません。つまり、5つの常任理事国のうち、どの国の地位も変えることはできないのです。

現在、国連安全保障理事会改革が議論されています。いくつかの選択肢があるが、主なものはその人数構成に関するものです。総会での交渉は、20年以上前から行われています。もともと、安全保障理事会のメンバー数を拡大する必要性を謳った決議がなされていました。この文書によると、改革はコンセンサス consensus(一致)ではなく、共通の同意 common consent に基づくものであるべきです。100パーセントのコンセンサスというのは、この種のものではありえません。コンセンサスから距離を置く国家が必ずひとつやふたつは出てきます。だからこそ、改革に着手した決議文には、"合意 common consent(申し合せ)に基づき"と書かれているのです。

今日、ふたつのグループの国があります。ひとつは、国連安保理の常任理事国入りを主張し、そのために結束した”4カ国 The Four”(インド、ブラジル、日本、ドイツ)に続くグループです。また、他の地域の国々にも働きかけ、支持を得ようとしています。常任理事国という新たな席を設けるべきだというのが、彼らの強い主張です。
これに対し、第2グループは、(メキシコの友人の言葉を借りれば)常任理事国入りは”国連の根幹に関わる不正義”であるとの考えです。土台は変えられないが、この不公平を増やすべきではない。常任理事国を作らずに、非永久理事国を一定数増やせばいい、と彼らは言います。このふたつは、相容れないアプローチです。
ある段階で、人々は、正反対のふたつの視点を ”結婚” させることは不可能であることを認識し、常任理事国を増やす代わりに ”半永久的” な議席を新たに設けるという妥協案を模索するようになりました。現在、非常任理事国に選出された国の任期は2年で、任期満了後すぐに再選されることはありません。
そこで、(既存の常任理事国、非常任理事国に加え)第三のカテゴリーとして半常任理事国を設け、限られた国(30カ国が確認されている)から10年間選出され、即時再選権を持つようにすることが提案されています。これは支持を得ることができませんでした。私は、これらの視点がいかに完全に相容れないものであるか、結果としてこれが妥協案となったことを説明しています。

ここまでの流れは、発展途上です。4カ国 The Four は、この問題を投票に付し、3分の2で決めたいと考えています。実は、国連憲章には、重要事項については3分の2の賛成でOKと書いてあります。しかし、このプロセスを開始するための決議には、3分の2よりもむしろ共通の同意が必要です。だから、協議が進行中なのです。

我々にとって、もう一つ決定的に重要なことは、発展途上国の同僚に明らかにしようとしていることです。私たちは何度も公の場で、もし常任理事国の増設が決定された場合、インドとブラジルが国連安保理の常任理事国の候補としてふさわしいと伝えています。しかし、明白な理由により、ドイツや日本について同じことを言うことはできません。
まず、国連安保理の15カ国のうち6カ国が欧米諸国であり、これは公平ではありません。ドイツと日本の政治を見てください。日本は立場的には欧米諸国です。ドイツも日本も、アメリカ、イギリス、フランスの政策に逆らうようなことはしていませんから、この2カ国が安保理メンバーになっても、安保理は何の付加価値も得られないことになります
途上国の代表が少ない(軽視されている)という事実は、とても重要なことです。それは悪化するばかりです。ですから、もし国連安全保障理事会を改革したいのであれば、発展途上国も含めて拡大しなければならないと明言しています。
我々は、常任理事国を増やすことに容易に合意することができますが、これが広範な支持に基づく決定であれば、非任期理事国を増やすことにも合意することができます。投票が合法であるためには、3分の2の投票が必要です。しかし、残りの3分の1はならず者国家が代表しているわけではありません。新しい常設の場所を作ることに反対しているのは、スカンジナビア人、メキシコ人、アルゼンチン人、スペイン人、イタリア人などです。これらの国々は、第一に、国連内での評判が確立しており、第二に、複数のプログラムに資金を提供する出資者です。投票のためだけにこれらの国々を対立させるのは…… 彼らは投票し、国連を分裂させ、そして ”これ” を批准する必要があります。国連安全保障理事会の憲章を改正するためには、5つの常任理事国すべてが必ず批准しなければなりません。

発展途上国を犠牲にして、国連安保理内で自分たちの立場をさらに強化しようとする欧米諸国の動きは、深刻な問題です。国連安全保障理事会憲章に明記された拒否権を常任理事国から奪うことは誰にもできません。それを変えようとする修正案は通りません。誰もがこのことに気づいています。これが現実です。アレクサンドル・ゴルチャコフの知恵から導かれる現実そのものです。

他にも試みはあります。フランスは長い間、国連安全保障理事会の常任理事国が自主的な制限を負い、人権、国際法、人道法、あるいは人道に対する罪の重大な大量侵害に関しては拒否権を行使しないという決定を採択するアイデアを進めてきました。素晴らしく聞こえます。

フランスがこの構想を最初に打ち出したとき、私たちはそれが現実にどのようなものなのか聞いてみました。
「人権や国際人道法の重大な大量侵害」とは、どのようなものでしょうか?
それを判断するのは裁判所である。国連安保理は独自の手続きルールに従う。フランス人とその支持者の問題の組み立て方は、私たちに直接的でストレートな質問をさせる。
なるほど。つまり、"重大な集団侵害" の場合は拒否権を行使しないと言っているのです。重大な違反が大量侵害になるのはいつですか? 100でしょうか? 120? 99ならどうです? 119ならいいのか?
つまり、実質的に実行不可能であり、もっぱらプロパガンダや広報として利用されます。

この問題は、広く議論されています。国連安全保障理事会改革を検討している政府間会合では、メンバーシップに加えて拒否権についても懸念しています。私たちは現実的な合意を探す必要があります。今、重要なのは、既存の国連安全保障理事会の大きな欠点は、開発途上国の適切な代表権がないことだということに、誰もが同意することです。これが私たちの立場です。

質問:あなたは人生で多くのことを成し遂げ、多くの人々と権威を享受していますが、今でもその例に倣っている人はいますか?

セルゲイ・ラブロフ:私があなたの年齢の頃、あるいはもっと若い頃、学生時代にある人たちを見習いたいと思ったことがありました。

私がモスクワ国立国際関係大学(MGIMO)に入学したのは、まったくの偶然でした。他の高等教育機関より1カ月早く入試が行われたのです。物理と数学を教えていたセルゲイ・クズネツォフ先生(ご冥福をお祈りします)に憧れ、モスクワ工学物理研究所(国立原子力研究大学MEPhI)に入学するのが夢だったのです。
彼は素晴らしい教育者であり友人でしたし、私たちと大差ない年齢でした。実際、彼は8歳か9歳年上でした。
一緒にハイキングに行ったり、いろいろな場所を訪ねたりして、本当の友達でした。私は彼を見習おうと思いました。
セルゲイ・クズネツォフは「物理学は面白い学問だが、私は人文科学の方が好きだ」と言っていました。私はムッとしましたよ。彼は、自分の意見としてそう説明しました。私は先生として彼に好意を抱いており、それが彼の後を継いだ理由だと説明しました。
ところが、MEPhI をはじめとする高等教育機関の入試は8月1日からで、MGIMOは7月1日からということが判明したのです。母が「やってみなさい」と言ってくれたのです。そうでなかったら、今こうして皆さんと一緒にいることはなかったでしょう。

MGIMO時代、私たちは何人かの教授が好きで、大切にしていました。私はシンハラ語を担当し、アレクサンダー・ベルコビッチ先生の専門的な指導のもとで勉強しました。残念ながら、彼もまた、今はこの世にいません。彼はセイロン島(現在のスリランカ)には行ったことがありませんでしたが、その国の公用語を教えていました。シンハラ語を使う国は他にありません。
彼と私は一緒にサッカー(フットボール?)をしました。他のゼミのあとに語学の授業があって、そのあと近くの中庭にあるホッケー場へ行きました。私たちはサッカーボールを蹴って走り回り、彼は友達を連れてきました。

私がソ連外務省に入省して最初の上司だったラフィク・ニシャノフさんは、今もここにいます。彼は駐スリランカ大使を務め、私はそこでシンハラ語の練習をしました。私は今でもシンハラ語の手紙を書くことができます。さて、まだまだ話は尽きない。

外相を務めたエフゲニー・プリマコフは、短い在任期間中に外務省の国威発揚に大きな功績を残しました。また、ロシア連邦にふさわしい政策方針を実行に移し始めました。彼は素晴らしい人格者でした。
東南アジア諸国連合(ASEAN)とロシアが協力していた頃は、お笑いショーを開催していましたが、10年ほど前にやめました。会議では、各代表団がショーやコンサート、寸劇を披露してくれました。彼は喜んで参加し、大きな岩のような存在でした。ノボデヴィーチェ墓地にある彼の墓石が岩のような形をしているのは当然で、これは非常に的確で要領を得た表現です。
政治家か友人かという質問も同じです。誕生日のお祝いや友人の集まりの時、彼は決して政治家らしく振舞いませんでした。この国には、見習うべき人がたくさんいます。

質問:欧米諸国は、同省のプレスリリースやあなたの発言で、我々の同僚と呼ばれており、それは肯定的な意味を持っています。しかし、外交儀礼に従う必要のない個人的な会話で、イギリスを我々の同僚と表現するでしょうか? 世界政府の秘密陰謀説を信じますか?

セルゲイ・ラブロフ:辞書を引く必要がありますね。記憶が確かなら、同僚 colleague とは同じ職業の人のことです。つまり、同僚は同志やパートナーではありません。"欧米のパートナー"と言うこともありますが。しかし、私たちは通常、心の中で “いわゆる" を追加します。"いわゆる欧米のパートナー Our so-called Western partners“と言うこともあります。もちろん、彼らの態度はパートナー的ではありません
極端な傲慢さ、どうしようもない独善性、自分たちはいつでもどこでも正しいことをしているという信念、優越感(上位、過剰な優越感)、ごう慢複合体です。さまざまな説明があります。

私は、特殊軍事作戦の開始後、西側諸国がロシア恐怖症の立場をとり、日常生活の中でロシア恐怖症を助長するスピードに驚かされました。つまり、16世紀、17世紀、18世紀以来、ロシアについてこのように考えることをやめなかったということです。政治アナリストは今、ロシア恐怖症を利用して、その時代からの西側諸国のロシアに関する記述に国民の注意を向けさせようとしています。
20世紀初頭、アメリカの政治アナリストたちは、ロシア人を野蛮人と表現しました。冷戦後に流行した、大西洋からウラル山脈、ウラジオストクに至る普遍的な人間の価値やヨーロッパについての尊大な考察は、一夜にして消え失せてしまいました。

人を悪く言いたくはありませんが、根深いものがあり、ようやく仮面が剥がれたというのがひとつの解釈でしょう。欧米の学校では、ドストエフスキーやトルストイを禁止したり、通りの名前を変えたりすることを批判する冷静な声も聞かれるようになりました。
私たちは、欧米の政府、少なくともその多くが、日常生活の中でロシア恐怖症をあおり、そのような否定的で恥ずべき感情から利益を得ようとさえしていることに注目しています。これは憂慮すべきことです。

ラトビアの言葉に耳を傾けてみてください。彼らは(ラトビアの銀行に)凍結されているロシア人のお金を没収してウクライナのために使い、その資金の一部をソ連の “占領" に対する補償として自分たちのために残しておくべきだと言っています。
ポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相はノルウェーに対し、原油価格が高騰している今、その石油利益の臨時収入を分け合うべきであると述べました。
同様に、ウクライナ当局は、誰もが自分たちに借りがある、ドイツの反応は遅すぎる、首相は “ふてくされたレバーソーセージ" であると言っています。これは、昨日までは想像もできなかったことです。

この人たちは、自分たちがお山の大将だと思っているのです。ロシアとロシアのすべてを糾弾しさえすれば、何でもできると言われています。例えば、駐ドイツのウクライナ大使アンドレイ・メルニク。インターネット上には、彼がホスト国の政府に対して行った不愉快な要求が溢れています。彼はドイツの政治家を個人的に侮辱しています。
これがファッショナブルになり、“アメリカのため for the Americans" と呼ばれる人たちにはルールがありません。アメリカ人は公然と、二極化した世界は許さない、一極化したままでなければならない、と言っています
米国のイエレン財務長官(元連邦準備制度理事長)は、ブレトンウッズ機関(IMFと世界銀行)とWTOに大規模な改革を要求しています。中国が急成長しすぎて米国の足元をすくったからです。つまり、中国は、欧米がブレトンウッズ機関やWTOを作ったときのルールに依存して、経済力を獲得し、勢いを増していることを認めたのです。中国は欧米のゲームに勝利したのです。そして、西側諸国は直ちにルールの変更を要求しました。
欧米のルールについては、これだけ言っておけばよいでしょう。さらに、IMF、世界銀行、WTOのルールは米国とヨーロッパで書かなければならず、新しいルールが採用された後、他の国々に説明すると主張しています。

このような状況には、世界に根強く存在する考え方が反映されていることを意識する必要があります。西洋は500年以上もの間、”自分の思いどおりに方針を決定してきた” のです。植民地を獲得し、”文明化” し、ルールを伝え、定規を使って国を分割してきました。
アフリカの国境を見てください。彼らは定規と鉛筆を使って、民族の真ん中に国境線を引き、その一部はある国に、もう一部は別の(しばしば敵対する)国に行き着くようにしました。欧米はこの状態を永続させたいのだろうが、それは失敗するでしょう。中国とインドがどのように発展しているかは明らかです。彼らがインドを反中国のフォーマットに引き込もうとしているのは偶然ではありません。
最近、日本がQUAD会議を主催しました。QUAD(米国、日本、オーストラリア、インド)は2、3年前にできたものです。インドの友人たちは、これらがかなり不作法な(節操のない)ゲームであることをよく理解しています。彼らは、QUADの経済プロジェクトに関与する用意はあるが、軍事的な側面を持たせようとする努力は絶対に支持しないと主張しています。

そして、オーストラリア、アメリカ、イギリスを含むAUKUSという軍事同盟の形成に乗り出しました(ご存じのように、いろんなことに首を突っ込んでくるのです)。今日、彼らは日本と韓国をこれに引きずり込み、ASEANを分裂させ、他の国々をこの軍事ブロックに引き寄せようとしています。そうすることで、40年にわたってアジア太平洋地域に存在し、すべての主要国(中国、インド、米国、ロシア、日本、韓国、オーストラリア)を含むASEAN諸国とそのパートナーの単一フォーマットへの参加を保証してきた普遍的な組織を破壊しようとしています。彼らは皆、一緒に行動していました。

そこでは、コンセンサスを求めたり、妥協点を見出したりする必要はなく、中国やロシア(ロシアも太平洋地域の大国である)を封じ込める意図も含め、強硬手段が奨励されることになります。

我々は忍耐強く武装しながら、独自の国際的な共同体の仕組みを進化させるべきです。SCO、BRICS、EAEU、CSTO、CISなどがあります。

国際開発の中心はユーラシア大陸に移っています。現時点では、ユーラシア地域で最も広範なパートナーシップのネットワークを持っています。交通、輸送、物流部門を含め、国の将来の発展のために、これらに頼るべきでしょう。

これが正しい道だと確信しています。マクドナルドの復活を期待することは(問題を単純化すれば)、誰かがやってきて、再びスペアや部品、半導体の供給を始めることを期待して、時間を稼ぎ、何もしないことを意味します。そうではなく、欧米のパートナーは、交渉が不可能であることを何度も証明しています。

欧米諸国は、われわれがヨーロッパに背を向け、東洋に撤退しようとしていると、何度も何度も言ってきました。しかし、私たちは誰からも目を背けてはいませんでした。
2014年2月、ウクライナでクーデターを起こした者たちによって、ヨーロッパは屈辱を味わったのです。ドイツ、フランス、ポーランドが、当時のウクライナ大統領と野党の間で成立した合意を保証した翌日に、その合意の署名に唾を吐きかけ、クーデターを起こしたのです。欧米は自分たちの塵を食らい(恥をかいて)※、その後、野党をクーデターの参加(支持)者ではなく、”民主的プロセスの一部” と表現するようになりました。

※ 原文はThe West ate their dust 。eat the dust:屈辱を受ける、恥をかく、役に立たなくなる、ガタが来る、故障する、動かなくなる、駄目になる、敗北する、敗北を喫する、完敗する

「忠誠を誓えばすべて許される」──これが彼らの論理です。EUはロシアとの関係をすべて断ち切りました。2014年時点では、毎年2回EUと首脳会談を行っていました。一丸となったロシア政府と、欧州委員会そろっての会議がありました。エネルギーや運輸から人権に至るまで、4つの共通スペースと20の分野別対話の場を設けていました。ハイテク計画を実行するための近代化パートナーシップの計画もありました。膨大な数の複雑な構造が、EUとの関係を支えていたのです。しかし、彼らは一夜にしてそのすべてを放棄してしまいました。

早くも貿易に影響を与える制裁が始まりました。当然のことながら、西側の隣国がパートナーシップを深める機会を積極的に模索し続けることを望まず、東側の隣国がそれを望むなら、結果は自明でしょう。たまたま、ユーラシアは世界の中で最も有望な地域として浮上しています。ドルやSWIFT以外の手段で、その発展に力を注ぐべきです。
私たちは、自分たちでその手段(資金)を考えなければなりません。それも難しいことではありません。我々は、パートナー国の通貨建て貿易(ロシア─中国、ロシア─インド、ロシア─イラン)やユーラシア経済同盟の枠組みでの貿易の割合をかなり増やしました。
前を向くことが必要です。そうです、私たちは困難に直面しています。自国の発展にはもっともっと積極的になるべきでしょう。しかし、これは大きな利点であり、可能性の源泉でもあります。

質問:対中政策の目的は何ですか?

セルゲイ・ラブロフ:最も近い隣国との友好関係を強化することです。私たちの関係は、戦略的パートナーシップと多面的な相互作用であるとする教義に関する文書があります。中華人民共和国とは長い国境があり、国際情勢における正義と多極化の原則を堅持するという共通の利益を有しています。私たちは、相互の経済的利益によって導かれています。
西側諸国が独裁的(尊大・横柄)な立場をとっている今、中国との経済的な結びつきはさらに加速されるでしょう。国家予算に流入する収入とは別に、極東や東シベリアの開発計画を実行する機会を与えてくれます。中国とのプロジェクトのほとんどは、そこで実施されています。これは、原子力などのハイテク分野だけでなく、他の分野でも私たちの潜在能力を引き出すチャンスです。中国は、欧米のソリューションに劣らない、よくできたITプロジェクトを持っています。その多くは相互利益をもたらすことができます。

国際的な場では、ロシアも中国も、西側が国際関係を民主化し、真の多極化秩序を確立するための自然なプロセスを阻害するのを止めることに関心を抱いており、それは変化した世界における国家の真の重みを反映することになるでしょう。
私たちがより民主的な国際関係を支持すると言うとき、西側が行っているような新しいルールを発明しようとするのではなく、国際連合の原点に戻ることによって、国際レベルで民主主義を確保できることを強調しているのです。国家の主権的平等を含め、すべては国連憲章に記されています。これを実践的に確保すれば、欧米がやっているような国内ではなく、国際的な場で広範な民主主義が実現するのです。

欧米と交渉していたとき、彼らは「すべての国の民主主義を支持する」と書き記すことを提案しました。私たちは、わかった、ただ、それぞれの国が自分の民主主義を決めればいいと言いました。また、国連憲章に書かれているように、国際舞台でも民主主義がなければならないと書きましょうと。
しかし、彼らはそのような記述を避けました。彼らはもはや主権を有する(独立した)平等を必要としていません。彼らが公言しているように、ルールに基づく国際秩序を望んでいるのです。

質問:あなたは幼少期をどこで過ごし、どのような環境でしたか? どんな楽しい思い出がありますか?

セルゲイ・ラブロフ::生き生きとした思い出があります。私は幼少期を祖父母の住むモスクワ州ノギンスクで過ごしました。母が長期出張のため、私は祖父母と一緒に暮らしていました。昔はボゴロドスクという町でした(とても美しい名前です)。今、私はこの街を再びボゴロドスクと名付けるよう、モスクワ州の指導者に働きかけているところです。
私たちはごく普通の木造家屋に住んでいました。2年生までそこに住んでいました。その後、モスクワに引っ越しました。でも、毎週末、友達に会いに行ったり、サッカーをしたり、冬はホッケーをしたりしました。スパルタクのスタジアムの近くに住んでいたので、サッカーファンになるのは “運命"でした。
残念ながら、幼なじみにはもう長いこと会っていません。一人はベラルーシに、もう一人は極東に移住しました。私たちはバラバラになってしまいました。

思い出といえば、外で遊んでいるときに、みんなと同じように、ちょっと子供っぽいイタズラをして、迷惑行為に近いことをしたことです。いい時代でした。しかし、私は断言できます、人の人生のどんな時期も良いものだと。そのことに、あなたはきっと気づくはずです。

質問:政治家は、個人的な信念に反するような厳しい決断をしなければならない場面で、どれくらいの頻度でその決断をしなければならないのでしょうか? また、そのような決断をするのは難しいですか?

セルゲイ・ラブロフ:下すべき決断が個人の信念と相反するものであれば、しないほうがいい。やむを得ず行う場合でも、個人的な信念と相反する場合は、役職に留まるか、退くかの選択をしなければなりません。避けて通ることはできません。少なくとも私にとっては。

質問:あなたに最も影響を与え、人生に役立った本は何ですか?

セルゲイ・ラブロフ:『巨匠とマルガリータ』です。

※『巨匠とマルガリータ』(アマゾンより引用)モスクワに出現した悪魔の一味が引き起こす不可解な事件の数々。20世紀最大のロシア語作家が描いた究極の奇想小説。全面改訳決定版!
焼けつくほどの異常な太陽に照らされた春のモスクワに、悪魔ヴォランドの一味が降臨し、作家協会議長ベルリオーズは彼の予告通りに首を切断される。やがて、町のアパートに棲みついた悪魔の面々は、不可思議な力を発揮してモスクワ中を恐怖に陥れていく。黒魔術のショー、しゃべる猫、偽のルーブル紙幣、裸の魔女、悪魔の大舞踏会。4日間の混乱ののち、多くの痕跡は炎に呑みこまれ、そして灰の中から〈巨匠〉の物語が奇跡のように蘇る……。SF、ミステリ、コミック、演劇、さまざまなジャンルの魅力が混淆するシュールでリアルな大長編。ローリング・ストーンズ「悪魔を憐れむ歌」にインスピレーションを与え、20世紀最高のロシア語文学と評される究極の奇想小説、全面改訳決定版!
〈ぼくがこの作品を選んだ理由 池澤夏樹〉
時として小説は巨大な建築である。これがその典型。奇怪な事件や魔術師やキリストの死の事情などの絵柄が重なる先に、ソ連という壮大な錯誤の構築物が見えてくる。この話の中のソ連はもちろん今の日本であり、アメリカであり、世界全体だ。

質問:MGIMO大学を卒業されたとのことですね。私はそこを受験しようと思っています。政治家としてではなく、一人の人間として、女子が外交で成功する見込みについてどう考えているのか知りたいです。それとも、男性の特権なのでしょうか?

セルゲイ・ラブロフ:ソ連時代には、女性が外交官になることは稀なことでした。私が就任してからは状況が大きく変わりました。現在、外務省には年間約120人の新入職員が採用されていますが、そのほぼ半数が女性です。これはもう何年も続いていることです。外務省の女性職員の数は絶えず比例して増えています。現在、多くの女性が次官級の地位に就いていますが、近い将来、女性の大使も増えることでしょう。ニューヨークのロシア国連常駐副代表は、他の多くの役職と同様、女性です。今のところ、それは十分ではありません。しかし、まもなく量は質につながるでしょう。

一人ひとりが特別な存在です。外務省で働くのは女性ではなく男性であるべきだ、というのは間違っています。すべてはあなた次第です。すべてをカバーするアドバイスなどありえません。

質問:2015年、あなたはラジオ・ロシアのインタビューで「グローバル化と相互依存の時代の国際情勢は、誰かが鉄のカーテンを降ろそうと決心すれば、その間にうっかり何かが巻き込まれるかもしれない」という有名な言葉を残しました。目の前の状況において、西側諸国はそれに一部巻き込まれただけでなく、すでに切り離されてしまったと私は考えています。欧米諸国は我々と再び国交を結ぶと思いますか、それはいつになるのでしょうか?

セルゲイ・ラブロフ:それは完全に西側諸国次第です。私は、彼らが ”激怒” を乗り越え、ロシアがここにあり、どこにも行かず、年々強くなっていることを理解したときに、それが実現すると信じています。もし、彼らが関係再開のために何かを打ち出すとしたら、私たちはそれが必要かどうか、少し考えてみるつもりです。
今、私たちが作っているのは、単なる輸入代替(ある国が従来外国から輸入していた製品を,国内生産によって部分的ないし全面的に自給化すること)プロセスではありません。祖国の安全保障、経済、社会領域を確保するために決定的に重要な産業の発展を確保するために、いかなるものであれ、欧米の供給に依存することはやめなければなりません。

我々は、我々自身と、信頼性を証明し、誰かの曲に合わせて踊ることのない国々だけを頼りにしています。もし欧米諸国が正気を取り戻し、何らかの形で協力のアイデアを出してきたら、その時に検討するつもりです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

Posted by kiyo.I