国際的なロシア愛ムーブメントの誕生
ウクライナ戦争でロシア領となった地域にあるダムが破壊され、大変な水害等が報告されています。例によって例の如く、ロシアが破壊したという報道がされています。悪いのはロシア、いいことはウクライナだそうです。最近の報道は事実を客観的に知らせるのではなく、この見方が正しいのだという意見や主張の場になったようです。終戦前の日本と同じです。日本軍は勝ち続けていたはずだったのです。
さて、日本の報道を見ていると、すぐにでもロシアが劣勢で負けるのだそうです。ずいぶん前から同じような話は何度も聞かされていたので耳タコです。ですが、世界を見るとウクライナを支援している政府は日本と欧米政府だけです。その欧米でも政府のウクライナ支援に反対する運動が勢いを増しています。中東も南米もアフリカ諸国もアメリカ離れが加速し、ロシア側に鞍替えしています。受動的に情報を受け取り、何気なく真に受けている人にとって「こんなはずじゃなかった」と気付かされる日が近づいているようです。
ロシアは世界中からバッシングを受けていると何気なく思っている方が多いかもしれません。実際は、バッシングを受けているのはウクライナを支援しているアメリカの武器商人、バイデン政権や日本の統一教会政府、EU諸国の隠れネオナチ政府です。メディアが、これまでの世界観が続いているかのような空気感を演出しているから気がつかないだけです。有り得なかったことが起きています。中東の産油国はアメリカを見限りロシアが進めるBRICSに参入しています。欧米諸国の辛酸な支配を受けてきたアフリカやアメリカの裏庭と言われた南米もロシアが提唱する多極世界に参加を表明しています。現実は既にひっくり返っています。あとはしぶしぶメディアが認めるしかない状況です。
そんな中で国際的なロシア愛ムーブメントが誕生しています。とはいえ、終戦前の日本で、日本は戦争に負けたんだというようなものですから、ピンとこないかもしれません。そういうものです。
カホフカダムの破壊についてはこちらに詳細な分析があります。
「KAKHOVKA DAM DESTRUCTION」
ロシア・バッシングの反動:国際的なロシア愛(愛好家)運動(MIR)の誕生
Russia-Bashing Blowback: The Birth of the International Russophile Movement (MIR)
By a special correspondent, with introduction by Pepe Escobar
PEPE ESCOBAR • JUNE 3, 2023 • 4,600 WORDS • 113 COMMENTS • REPLY
ロシア・バッシングの反動:国際的なロシア愛(愛好家)運動(MIR)の誕生
特派員著、ペペ・エスコバルによる前書き
ペペ・エスコバル、2023年6月3日
ビガノ大司教、セルゲイ・ラブロフ、その他の著名人が、非常に大きくなる可能性のある新しい世界的な草の根運動の幕を開けた。40カ国からロシア愛好家がモスクワに集結。
先月モスクワで開催された「国際ロシア愛好家運動」について、内部関係者による初の英語による包括的で詳細な報告書をお届けできることを嬉しく思う。
ロシア外務省の支援を受けたこのプロジェクトは、2022年2月のウクライナでの特別軍事作戦(SMO)の開始以来、いつもの札付きが放つ執拗なロシア恐怖症とキャンセル文化の波を打ち消すことを目的としている。
読者の皆さんも確認できると思うが、これはグローバル・サウスにとってインスピレーションとなりうる多極的な情報プロジェクトである。文化や文明的価値観、より公平な国際関係システムのビジョンに深く根ざした肯定的な姿勢で、傲慢と不寛容に対抗しようというものだ。
今こそ、ナラティブを変える時である。
お楽しみに(ペペ・エスコバル)
昨年2月にロシアがウクライナで軍事行動を開始して以来、グローバリストのエリートメディアは、現在のロシア、そしてロシアの政府、大統領、文化、歴史、宗教など、ロシアのすべてを悪の象徴として描き出そうと躍起になっている。予想通り、これは今、大失敗misfiring(不発になる、不点火)している。その隙を突いて、ブルガリアの著名人が、ロシア政府やロシアの有力エリートから拍手と励ましを受けながら、20年来のロシア愛好家運動を世界的に展開している。もしこの運動が成功すれば、ロシアとその世界中の多くの友人や崇拝者たちは、グローバリストのエリートたちに対して強力なPRの勝利を収めたことになるだろう。
最近発足した国際ロシア愛好家運動は、フランス語の頭文字をとってMIR(Movement International Russophile)といい、ロシア語で"平和"や"世界"を意味する。3月にモスクワで開かれた設立総会では、ロシアのメディアによって大きく取り上げられ、42カ国からの友人や代表者たちが参加して、よく組織された一連の公開イベントを華やかに祝った。
歓迎会では、乾杯の音頭、豪華なビュッフェ、コサック音楽と舞踊団、ウォッカとシャンパンを振る舞うなど、まさにロシア的な催しが行われ、大いに盛り上がった。ロシアの民族舞踊が好きなことで知られるザハロワ女史は、その期待を裏切らず、疑いもなくヒールを蹴り上げる機会を楽しんでいた。ロシアの人気者である彼女が毎日発信している情報戦争からの気分転換を歓迎しているようだ。
マリア・ザハロワの「カリンカ」は、すでに伝説となっています。しかし、私たちはさらに象徴的なビデオを用意しました!
ファシズムが再び頭をもたげている今日、ロシア人はこのヒドラに抵抗する準備ができているすべての人々を結集しているのです。明日はモスクワで国際ロシア愛運動の会議が開かれます。そして今夜はディナーパーティー、ロシアのおもてなし、そしてもちろんダンスです!
オイシャ、オイシャ
私を怖がらないで
私はあなたを傷つけない
心配しないでください!
今日の現実の中で、これ以上の言葉があるだろうか。難しいですね。だから、平和のために私たちの家に来た親愛なるお客様、心配しないで、私たちはあなたを傷つけませんよ。しかし、もしあなたが戦争に行こうと思っているのなら
https://vk.com/wall-75679763_5041310
Link to above video. 820,000 views.
翌日、MIRの設立総会は、ロシアで最も愛されている詩人、天才アレクサンドル・プーシキンを記念したロシアの中心となる博物館の大きなガラス張りのアトリウムで開催された。
セルゲイ・ラブロフ外相をはじめ、ザハロワ女史、ロシア最大政党の党首、政府要人、実業家コンスタンティン・マロフィーエフ氏、政治哲学者アレクサンドル・ドゥーギン氏、そしてマロフィーエフ氏から伝えられたロシア教会のキリル総主教の温かい歓迎を受け、ロシアのあらゆる分野の政治家が代表者たちを迎えた。
前駐米教皇大使で、フランシスコ教皇を痛烈に批判するイタリアのビガノ大司教は、ビデオリンクを通じて10分間のスピーチを行い、ロシアを「野蛮に対する文明の最後の砦」と呼び、素晴らしいスピーチが続いた一日の中で非常に印象に残るスピーチとなった。
※カルロ・マリア・ビガノ大司教:バチカンの財政的汚職を明らかにした2012年のバチカンの文書流出事件、及び2018年の手紙で教皇フランシスコと他の教会指導者が当時のセオドア・マカリック枢機卿に対する性的虐待の申し立てを隠蔽したと非難した事で知られる
英文訳はこちらをご覧ください。
この演説に関する良いレビューはこちらです。
イタリア語のビデオはこちらです。
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、このイベントのトップを飾るスピーチを行った。彼はまず、プーチン大統領から議会へのメッセージを読み上げた。その全文はこちらでご覧いただける。ラヴロフの当意即妙の応酬が繰り広げられた。
私たちは皆、大人です。欧米諸国のように、古代の偉大な文明を代表する国々を含むすべての人に、自分たちの命令に従うよう公然と要求するような、見下した態度は取らないようにしましょう。
ここに、自分たちの偉大さと例外性に執着する西洋文明が堕落していく姿と、私たちとの違いがあります。今、西洋文明は命がけで戦い、どんなことでもして、失われつつある世界支配にしがみつこうとしています。
米国(正直に言うと、アングロサクソン)は、自らの手で権力の手綱を握り、ヨーロッパに戦略的自治を忘れるよう率直に言いました。あなた方には戦略的自治権はない! お前たち全員、我々の言うとおりにしろ、と言っているのです。
私たちの共通の広大な大陸の古典の伝統が深く沁み込んだ膨大な数のヨーロッパ人は、私たちの共通の文化や歴史の成果や、私たちの共通の広大なユーラシア大陸を含む地球の人々が、本当に必要としている権利のための戦いを放棄するつもりはありません。
MIRの創設メンバーも、著名なブラジル人ジャーナリストのペペ・エスコバル氏、実業家のピエール・ド・ゴール氏(元フランス大統領の孫)、イタリアの人気作家・学者・公共活動家、ドイツアラブ協会会長の王女ヴィットリア・アリアータ博士、ドイツの政治家・活動家のヴァルデマール・ヘルト(AfDの元連邦議会議員)らが発言した。
ロシア恐怖症をイスラム恐怖症になぞらえたアリアータ博士のスピーチも大変好評で、イベントの演説レベルの高さをうかがい知ることができる。スピーチのRumble Videoはこちらからご覧いただける。全英文テキストはこちら、 また、ロシアのキリスト教ニュースサイト(Tsargrad)に掲載された、アリアータのインタビュー(活字)はこちら。
スピーチの後、代表者たちは正式に運動組織を設立し、理事会を選出した。
エスコバルは、この出来事についてZerohedgeに寄稿し、MIRに参加した理由を説明している。
私は創設メンバーであり、憲章に私の名前があります。私は40年近く外国特派員をやっているが、世界のどこの国でも政治・文化運動に参加したことはありません。ノマド・インディペンデント(流浪の独立派)は熱烈な種族です。
しかし、これは極めて深刻なことです。現在の、救いようのないほど凡庸な集団的西側の自称"エリート"たちは、あらゆる面でロシアの崩壊を望んでいるに等しいのです。
ノー・パサラン(奴らを通すな。ファシズムに抗する人たちの世界共通のスローガン)
以下は、エスコバルのスピーチです。
第三者の立場であるRTのアリアータ博士のインタビューへのリンクはこちらです。
こちらは全過程のビデオへのリンクです(ロシア語)。
また、公式のロシア正教会は、4人の代表を派遣し、この大会に強力に参加している。その様子を伝えるロシアのTVニュースへのリンクです(ロシア語)。
その夜、代表団と友人たちは、外務省の"ハウス・オブ・レセプションズ"で再びワインと料理を楽しんだ。ここは、モスクワ中心部にある19世紀のゴシック様式の大邸宅で、かつては帝政ロシアの富豪が所有していたが、現在は外務省の最も豪華な社交行事に使用されている。ラヴロフとザハロワは、他の著名人たちとともに再び出席し、何時間もゲストに対応し、しばしば小グループと交流しながら、活発な意見交換を行った。堅苦しい雰囲気とは正反対で、ロシアが個人的な魅力と外交力をめったにないほど効果的に発揮した例といえるだろう。
このイベントには、ドイツのジャーナリストでソーシャルメディアでも人気の高いアリーナ・リップ、ロシアの活動家で実業家のアレクセイ・コモフ、アメリカの俳優スティーブン・セガール、アメリカ正教会の司祭ジョセフ・グリーソン、ドイツのオルタナティブ・ジャーナリスト、トーマス・ローパーなどの著名人が参加しており、ドイツの聴衆に向けてこのイベントの様子を紹介している。
MIRへの熱意はプーチン氏にも通じ、プーチン氏は2019年にマリノフ氏に希少な勲章である"友好勲章"を授与している。当時、マリノフ氏はプーチンに世界的なロシア愛好家運動を作りたいという思いを伝え、プーチンはその考えを心から支持した。
中心的な問題は、これほど強力な打ち上げの後、MIRが実際に仕事に取り掛かり、その約束を果たすのに必要なハードワークを行うかどうかである。ロシア政府による熱狂的な歓送会は理解できるし、実際、MIRの外交的、ソフトパワー的、PR的メリットは明らかである。グローバリストのメディアによる大規模なロシア孤立化キャンペーンに直面して、世界中の何百万人もの人々、特にグローバリスト・エリートの本拠地である米国と西ヨーロッパの人々が、悪魔化を拒否し、さまざまな理由から、むしろロシアが好きで賞賛していると言ったら、それは究極の番狂わせ(意外な結果)と言えるだろう。これこそが、MIRの狙いなのだ。
ロシアは、数世紀にわたる文化、キリスト教、歴史的業績の並はずれた豊かさと人気という、巨大な、そして大部分は達成されていないソフトパワーの資源を持っている国である。その文学、音楽、バレエ、ダンス、芸術、スポーツなどは伝説的であり、広く愛され、賞賛されている。そして、いつものグローバリストの悪魔化(極悪非道の悪者として示す)キャンペーンに屈することはないだろう。伝統的なキリスト教の主要な擁護者としてのロシアの出現は、もうひとつの抵抗し難い(人を感動させずにはおかない)最前線である。第三世界における主権と反植民地運動の数十年にわたる支持によって、ロシアはグローバル・サウス全域で友人と称賛者を獲得している。
『グローバリスタン』グローバル化した世界はいかにして流動的な戦争に突入するのか?
ウクライナ紛争を受け、欧米をはじめ世界中でロシアへの支持や同情が高まっている昨今、MIRはまさに適切な時期に適切なアイデアを提供していると言えよう。14ヶ月前の軍事介入開始時には、欧米のグローバリストのプロパガンダが支配し、ウクライナへの強い同情が生まれたとすれば、それ以降、欧米の人々は紛争をより理解する時間があり、インターネット上で広く事実を知ることができ、多くの人々がロシア側に立っている。米国でも西ヨーロッパでも、ロシアへの支持は劇的に高まっており、米国では30%という大きな水準に達しているため、ネオコンの支配層が戦争をさらに推進することへの圧力となっている。
MIR設立から1ヶ月が経過した先週、私たちはモスクワでマリノフ氏と対談し、MIRの進捗状況や世界中のロシア愛好家が今後期待することを聞く機会があった。マリノフ氏は、MIRの活動が本格的に始まっていること、そしていくつかの素晴らしい計画があることを確認した。
具体的には、会員が運動と連絡を取り合い、最新の活動を知ることができ、会員登録や入会ができる多言語対応のグローバルサイトを構築中である。また、ロシアの文化や歴史に関連するさまざまなテーマについて、バーチャルの"ラウンドテーブル"と呼ばれるオンラインイベントを年間を通して計画している。最も近いものでは、多極化に関する24時間のオンラインディスカッションが4月29日に予定されている。世界中の誰でも参加することができる。参加方法はこちらでご確認ください。
6月末にはセルビアで、同じくオンライン参加型の実際のラウンドテーブルが計画されている。最も重要なのは、署名活動の可能性について議論していることだ。ロシアに対する経済制裁の中止を求める100万人の署名を集めることを目標に、EUで署名活動を行うことも検討されている。そうすれば、法律上、欧州議会でこのテーマについての討論が行われることになる。MIRでは、ロシアへの観光を奨励し、観光ビザを簡単で手間のかからない手続きにする"民間外交"を中心に据える予定だ。2024年1月には、モスクワで大規模なイベントを開催し、再び親露 Russophilia の名の下に世界中から数百人を集めたいと考えている。
ブルガリアのルーツ
マリノフ(Wikipedia)54歳は、母国ブルガリアの生涯にわたる著名な人物であり、その政治家人生のほぼすべてにおいて、職業的に親露を推進してきた。隣国セルビアと同様、ブルガリアでもロシアへの愛情は強力な政治的潮流となっている。これは、ブルガリアとロシアの間に1500年前から続くスラブ系と正教会の兄弟関係(ロシア人とブルガリア人は同じスラブ系民族から派生)に起因する。
ブルガリアは、ロシア(ロシアにはウクライナとベラルーシが含まれる)、ブルガリア、セルビアの教会の礼拝、祈り、聖書で使われている聖職者の言語、古代教会スラブ語(9世紀に翻訳した聖書に用いられているスラブ語)の発祥の地である。実際、ブルガリアはセルビアと同様、オスマン帝国からの独立を果たしたが、その背景には、ロシア・トルコ戦争におけるロシアの多大な犠牲と支援があった。また、ブルガリアはセルビアと同様、ボルシェビキの地獄のような大混乱から逃れる白系ロシア人にとって重要な避難場所となった。
マリノフは2003年にブルガリアのロシア愛好家運動の創設に関わり、以来、その運動は彼の人生の大部分を占めており、実際、ブルガリアの国内政治において大きな力を発揮している。
マリノフは、世界的なロシア愛好家運動の構築を何年も前から考えており、昨年9月、モスクワの外務省で行われたロシアで最も偉大で人気のある軍事・宗教上の英雄の一人、聖アレクサンドル・ネフスキー(1220~1263年)の像の除幕式に出席した際に、ロシアの外相セルゲイ・ラヴロフと話し合ったことがきっかけで、始めることを決めたと語っている。
彼は2018年、リヴァディア・フォーラムで始まる世界的なロシア愛好家運動の後ろ盾となるよう、ロシアの政治指導者に積極的に働きかけを始めた。リヴァディア・フォーラムは、アメリカの上院に相当するロシアの連邦評議会が、クリミアにある有名な同名の王宮(リヴァディア宮殿)で開催する年次会議である。最後のツァーリとその一族のお気に入りの場所で、ニコライ2世はその後、列聖された。この年次イベントは、クリミアがロシアの一部となることを投票で決めた後、世界中からロシアの友人を集めることを目的に始められたものである。
マリノフのブルガリアの組織「ロシア愛好家 Russophiles」はブルガリア全土に支部を持ち、公開野外イベントを開催し、その参加者は4万人に達している。こちらに、彼らのウェブサイトへのリンクと、彼らに関するウィキペディアの記事がある。彼らの活動には、ロシアとブルガリアの友好を示す公共モニュメントの維持、重要な歴史的日付の特定による公共イベント、座談会、コンサートの開催、書籍、記事、テレビ番組、映画の出版、学校や幼稚園との連携を含むロシアについての教育が含まれる。
マリノフは、ブルガリアの政党政治に携わり、主にブルガリア共産党の後身である社会民主党(BSP)で、メディアと出版を中心に活動してきた。BSPの新聞「ドゥーマ」、世界最古の社会民主主義雑誌「ニュータイムズ」、雑誌「コンテンポラリーインディケーター」、ロシア政府の機関紙「ロシアンガゼット」のブルガリア版、フランスの大手日刊紙「ルモンド」が過半数を所有する左派・反グローバリズムの老舗「ルモンド・ディプロマティーク」などで成功を収めている。マリノフは、BSPのブルガリア議会代表も務めたことがある。2015年にBSPと決別したのは、ロシアに関して親米的な立場を強めていることに反対したためである。
政治的見解について尋ねられたマリノフは、左右のパラダイムは時代遅れであり、人々をコントロールし操作するためにのみ存在すると主張している。彼は隠すことなくキリスト教徒であり、金色の正教会の十字架の襟章をつけ、スピーチや会話にキリスト教の言及をふんだんに使っている。大会での紹介スピーチで、マリノフは、ロシアに代表される真実と良識の抱擁が、彼の親露に対する理解であると説明した。そして、欺瞞と悪、それは彼が西側で権力を握っている"ネオリベラル独裁"と呼ぶものによって代表されると説明した。
マリノフは、欧米の人々は悪意のあるエリートによって抑圧されていると考えており、欧米の人々とその政府をひとくくりにしてはいけないと強調した。「国民と政府を混同してはいけない」とマリノフは言う。2019年にプーチンと会ったときに、このことを強調し、プーチンもそれに同意して、その後の演説で繰り返しこのテーマを進めたという。
ペペ・エスコバル(著)『カオスの帝国』
このインタビューで一番伝えたいことは、マリノフが強調したロシア愛の思想を体現する、"伝統的価値観 ─ 強い国家 ─ 多極化する世界"、この3つのシンプルな考え方である。「ロシアは多極化を掲げているので、ロシア愛であることは自国の愛国者であることを意味する」と詳しく説明している。マリノフは、このシンプルな考え方は、世界のあらゆる宗教、政治体制に通用するものであり、考え抜いた末に、組織の理念をこの3点に集約したのは、まさに世界に受け入れられるからだと説明した。
マリノフの話を聞いていると、彼が心からクリスチャンであること、そして襟章は見せかけのものではないことがよくわかる。彼の会話には、信仰への言及がちりばめられている。「謙虚さ、誠実さ、透明性 humility, honesty, and transparency」という原則のもとにMIRを運営すると言い、「精神的な戦いだ spiritual battle」と宣言している。
MIRが宗教に対して完全に中立であるにもかかわらず、その雰囲気はキリスト教的な色合いを帯びていることに気づかざるを得ない。創立メンバーのマリノフ、ヘルト、ソルリンの3人は、非常に保守的なキリスト教徒である。コンスタンティン・マロフェーエフとアレクサンドル・ドゥーギンも同様で、さらに堅固なキリスト教正教徒の君主制主義者である。これは、世界ロシア人会議でのドゥーギンの最近のスピーチで、キリスト教の世界観が明確に述べられている。ロシア正教会は4人の代表を派遣し、主要なキリスト教テレビ局がこのイベントを報道した。もう一人の代表はパレスチナ正教会の司祭である。
マリノフの大学の学位は歴史学で、ロシアとブルガリアの友好のルーツに関する彼の議論からは、ヨーロッパの歴史、政治哲学、キリスト教正教の神学に対する高度な理解がうかがえる。確かに、マリノフはジャーナリズム、メディア、思想に没頭している人という印象がある。
彼は、ロシアは東洋と西洋の両方に属しているため、世界に平和と理解をもたらす理想的な器であるという考えを力説している。ロシアやブルガリアのような国は、何世紀にもわたって、時には敵対する隣人とうまくやっていくことを学ばなければならなかった。東欧のキリスト教正教会の精神は、より断定的で分裂的な西洋よりも「繊細で微妙なニュアンス」があり、協力と合意に重点を置いている、と彼は主張している。
ロシアのエリートたちの間で急増している、西側からの移民、特にロシア系(ロシア人はウクライナやベラルーシも含むと理解している)の人々に対してロシアを開放しようという動きについて聞かれたマリノフは、この現象は知っているし、支持しているが、これは MIRの主要テーマにはならないだろうと答えた。MIRの副会長であるドイツの政治家ヴァルデマール・ヘルトは、この運動に非常に積極的であり、重なる部分があると思われる。
組織的な話に戻ると、彼は MIRをゆっくりと、しかし確実に展開していくことを強調する。先月の設立当初から、どうすれば参加できるのか、どう関わればいいのかという声が多く、熱気に包まれているという。また、過度な期待は禁物であるとしながらも、すべては軌道に乗っており、よいタイミングで行われることを再確認している。具体的には、来年度のMIRの活動やプログラムについて、5月上旬には最終的な決定がなされる見込みであるという。
マリノフによると、多くの人が関心を寄せているにもかかわらず、MIRへの入会はロシア国民には開放されないという。「ロシア国民はすでにロシアびいきだ、少なくともそうあるべきだ」と彼は冗談めかして言う。「他の国の人たちがロシアへの愛情や賞賛を登録する場所にしたいのです」
MIRは、モスクワで開催された設立総会で、以下のような運営組織を選出した。
会長:ニコライ・マリノフ ─ ブルガリア
副会長
ヴァルデマール・ヘルト ─ 政治家(元AfD)、社会活動家 ─ ドイツ
ファブリス・ソーリン ─ 実業家、社会活動家 ─ フランス
エリー・ハテム ─ 弁護士、政治顧問 ─ レバノン
スレイマン・アンタ・ンディアイエ ─ 外交官 ─ セネガル
メンバー
ヤン・チャルノグルスキー ─ 元首相 ─ スロバキア
ヴィットリア・アリアータ王女 ─ 作家、社会活動家 ─ イタリア、ウィキペディア、 YouTubeで見ることができる。
イヴァン コスティ ─ 政治家 ─ セルビア
ペペ・エスコバル ─ ジャーナリスト ─ ブラジル
ガイ・メッタン ─ ジャーナリスト、政治家 ─ スイス
マリウシュ・シヴィデル ─ ジャーナリスト ─ ポーランド
サミール・エル・ガドバン ─ キリスト教活動家 ─ シリア
パトリック・ポッペル ─ 活動家、ジャーナリスト ─ オーストリア
ミキス・フィラニオティス ─ 文芸翻訳家 ─ キプロス
オムルベク・エゲンベルディエフ ─ 公人 ─ キルギスタン
ローレンティウス・レイモンド・ジュニア ─ 歌手 ─ インドネシア
スティーブン・セガール ─ 俳優 ─ アメリカ
サミー・コトワニ ─ 実業家 ─ インド
シェリフ・ゲド ─ 社会活動家 ─ エジプト
ユヌッソウ・ドゥカンシ ─ 政治活動家 ─ マリ
アレクサンドル・ジョルバヴィア ─ アルバニア
設立総会に参加した国々(39か国)は、以下の通りです。
アルバニア
アルゼンチン
オーストリア
アルメニア
ベラルーシ
ブラジル
ブルガリア
キプロス
チェコ共和国
エジプト
フランス
グルジア
ドイツ
ハンガリー
インド
インドネシア
イスラエル
イタリア
キルギスタン
レバノン
ラトビア
リトアニア
マリ
モルドバ
モンテネグロ
ポーランド
ルーマニア
セネガル
セルビア
スロバキア
南アフリカ共和国
スペイン
スーダン
シリア
スイス
トランスニストリア
トルコ
アメリカ
ベネズエラ
主な不参加国は、日本、中国、オーストラリア、カナダなどである。マリノフは、短期間のうちに世界のほとんどの国が彼の組織に参加することになると考えている。
ロシアのある新聞社は、この会議の雰囲気や考え方をよく伝える素晴らしい記事を掲載している。
新しい運動のエンブレムは、バレリーナが人工衛星を空中に投げ、ロシア国旗の色に包まれたものだ。このシンボルの選択は、文化の周りに人々を団結させるということを強調するためのものだ。
このことは、大会のゲストも強調していたことだった。─ セネガルの詩人・外交官スレイマン・アンタ・ンディアイエと情熱的なシチリアの王女ヴィットリア・アリアータ・ディ・ヴィラフランカ、ブラジルのコスモポリタン、左派地政学者ペペ・エスコバルとスロバキア元首相ヤン・チャルノグルスキー、そして、悪魔主義、トランスヒューマニズム、退化へと否応なく傾斜していく世界において、ロシアに救いの最後の防波堤を見るイタリアのカルロ・マリア・ビガノ司教。ロシア愛は、ロシアの政策、指導者、イデオロギーを無条件に支持する人たちではない。なにもかもが全く違う。登壇者の中心テーマは、さまざまな方法で繰り返されるアイデア(ロシアは千年の文明、偉大な文化、美しく、誠実で、才能があり、親切な国民)だった。そのドラマチックな歴史には、さまざまな展開があった。あるときは悲劇的で怪物的、あるときは美しく崇高なものだった。そして、人類に多くの天才と偉大な芸術作品を与え、宗教的経験の深みと社会実験の革新を開き、ヨーロッパのナチズムの致命的な攻撃を退け、ユーラシアの広大な土地に広がる文明の基礎を築いたこの文化規範は、愛され賞賛されるに値するものである。
ロシア愛好家の会議は、まさに愛に捧げられた。参加者の一人がこう言った。
「愛とは憎しみの裏返しではなく、愛には対立するものがなく、すべてを受け入れる(意味を理解する)ものなのです」
そう、参加者は時折、ロシア恐怖症への反発にも言及した。しかし、問題の本質は、ロシア恐怖症との闘いではまったくない。ロシアは、これこれの政治指導者とその政策というように、たったひとつのことに還元することはできない。ロシアの歴史の弁証法は、あまりにも多様である。ユーラシア大陸の他の民族を自らの周りに集めたロシア民族は、直線的な運命を持っているわけではない。生きとし生けるもののように、さまざまな道を歩み、過ちを犯し、行き詰まり、また正しい道へと戻っていく。常に自分自身と最高の真実を求めている。多くの発言が、多極化する世界秩序に捧げられた。セルゲイ・ラブロフは、将来の世界秩序に関するロシアの戦略的ビジョンについて概説した。それは、真の民主主義、国際法の尊重、全人類の文明、民族、文化の意思の尊重に基づくものであり、いかなる側のヘゲモニーも超えたものでなければならない、と彼は言う。しかし、ロシア自身は歴史的に見ても、まさにそのような多極化社会である。正教、イスラム教、仏教、ユダヤ教など、さまざまな宗派が平和的かつ調和的に共存し、何百もの民族と文化がいまだ保たれている。ロシアは、宗教戦争や民族の弾圧を知らない。ロシア人は、他の民族をひとつの友愛の連合体に組み入れ、他の人たち、つまり早い時期にロシア人と一緒になった人たちと平等に受け入れていた。ソ連時代もそうだったが、帝政時代もそうだった。ロシアは、その歴史的アイデンティティにおいて、多極化の例である。
それ故に、モスクワがそのようなバランスのとれた多極的な世界秩序を提唱するのは、ごく自然なことである。同時に、ロシア人自身は、間違いに取り組み、歴史のある時期には、この高い理想から逸脱していたことを認める用意がある。
ロシアへの愛から、ロシア愛好家会議の参加者はさまざまな方法で、誰に対しても憎悪を抱いてはいけないと強調した。これは反同盟関係ではなく、多極化を選択し、あらゆる形態の意志・感情に対して知的専制政治を拒否する人類の一部分の正直でオープンな立場である。政府は必ずしも社会の立場を反映しているわけではない。そして、自らをロシア愛好者と称する人々は、単に、自由に、誇らしげに、自分自身の意見を表明しているに過ぎない。自由な人は誰でも、自分が選んだものを主権を有して、自主的に愛する権利を持っている。ロシア愛好家会議では、演説者の誰一人として他国民への憎悪や非難を表明せず、ロシアが行っている戦争や特殊軍事作戦の支持については一言も語らなかった。これは内戦であり、早く終わって平和になればいい、というのが参加者の大半の主張だった。人が死ぬことほどつらいことはない。そして、民族間の平和ほど神聖なものはない。
それが、ロシアを愛し、この愛を恥じない人々の結論だった。
『オバマはグローバリスタンをやっている』
大会ではマニフェストも採択され、世界中でロシアが広くアピールされていることや、MIRのアプローチについて、さらに深く知ることができる。
ロシア愛好家国際運動創設者のマニフェスト
ロシアは世界中に多くの友人を持つ。歴史的、文明的、文化的な理由から、国境を越えて心からの共感、尊敬、そして愛情をもたらしている。
世界の多くの人々は、ロシアとロシア人に対する温かい感情に導かれ、その言語と文化に興味を持ち、ロシア人とのコミュニケーションとより良い理解を求め、ロシアの経済と政治生活に関する信頼できる、思想的に偏りのない情報を探している。
これらの感情、これらの関心、これらの願望は、尊重され、すべてのサポートに値する。このようなロシアの人々への温かい思いに導かれ、そしてまた
●現代世界におけるロシアの重要な役割と影響力を考慮している
●ロシアの歴史、言語、文化に対する敬意を表明する
●相互協力が両国民をより強くすると固く信じている
●ロシアとの積極的で意図的な対話なくして、私たちのグローバルな世界は不完全で不安定であるという信念を表明している
私たち、さまざまな国のロシア愛好家は、ロシア愛好家国際運動を創設し、その絶え間ない強化・拡大を通じて、私たちはこれからもそうしていくだろう
●ロシア文化の普及とその成果への認識を促進する
●世界中のロシアの友人たちが、ロシアに関連する活動を組織的かつ計画的に行うことを支援する
●ロシアに関する信頼できる情報の発信と、現代における重要な問題に対するロシアの姿勢を支援する
●多極化、平和、調和のとれた世界を守るため、愛と優しさの"民間外交"を強化する
“民間外交"を通じて、世界中のロシア愛好家は、自国の文化、経済、社会制度に大いに役立ち、相互理解の探求を促進し、今日の紛争の世界における敵意、偽情報、不信を克服するために働くことができる。
私たちロシア愛好家国際運動の創設者は、民族間の相互尊重と友好に代わる合理的な選択肢はないと確信しており、私たちのイニシアチブが世界にとって必要かつ有用であると認識するすべての人々が、このマニフェストに署名して私たちを支援するよう呼びかける。
(著者または代理人の許可を得てTelegraより転載)
──おわり
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
@kiyo18383090
Posted by kiyo.I
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アメリカの地政学的・地理経済的な目標は、ロシアの統一を破壊し、政権交代を行い、膨 ...
マイケル・ハドソン、”ガザ虐殺は露骨な政策”
イスラエルでは現在、二国家による解決はありえない。オール・イスラエルかオール・パ ...
プリゴジンは真の敵が誰なのか、倒すにはどうすればいいかを認識させた
ペペ・エスコバル「ロシアが直面している主な問題は、覇権国家でもNATOでもない。 ...
ロシア主導のBRICSとイラン主導の抵抗枢軸が力を合わせれば米国のいない西アジアを形成することができる
アメリカに都合のいい、ルールによる支配がやっと終わる