プラズマ宇宙論② ── プラズマ物理学の歴史
ビルケランド、ラングミュア、アルヴェーン……
プラズマ物理学の歴史は受難の歴史と言ってもいいかもしれません。ビルケランドがオーロラが電気的現象だということを実験を通して証明し、ラングミュアがプラズマと命名し、アルヴェーンがプラズマの挙動を理論付け、ノーヴェル賞を受賞したにもかかわらず、惑星間磁気圏物理学の分野のリーダーとみなされていたシドニー・チャップマン(1888-1970)は、ビルケランドの研究を議論することさえ拒否しました。後にシドニー・チャップマンが間違っていたことが明らかになったにもかかわらず、その間違いは修正されていません。
「壮大な宇宙ドラマを書こうとすれば、必然的に神話に行き着く。時間と空間のますます大きな領域において、知識を無知に代えさせようとすることが科学である」
──ハンス・アルヴェーン
プラズマの簡潔な歴史Ⅰ
[歴史Ⅰ]
クリスティアン・ビルケランド(1867-1917)、ノルウェー
クリスティアン・ビルケランド
ビルケランドは、オーロラは太陽から放出された荷電粒子が地球の磁場によって捕捉され、極域の大気に向けられたものであると推測した最初の人物の一人である。この理論を証明するため、ビルケランドは実験室でオーロラを人工的に作り出す有名な"テレラ"実験を行った。彼の理論は当初は一笑に付され、人工衛星による測定が彼の正しさを証明するようになったのは、宇宙時代の今になってからである。世紀の4分の1にも及ぶ論争の末、宇宙空間を流れる電流は彼の名にちなんでビルケランド電流と名づけられた。
「宇宙空間全体が電子とあらゆる種類の飛翔する電気イオンで満たされていると仮定するのは、我々の視点からは当然の帰結のように思われる。そして、進化の過程でおのおのの太陽系が宇宙空間に電気的微粒子を放出していると仮定した。したがって、宇宙の物質量の大部分は、太陽系や星雲の中ではなく、何もない空間にあると考えるのは不合理ではないように思われる」
クリスティアン・ビルケランド
重要なのは、彼の科学へのアプローチが、数学的モデリングに加えて、観察と実験室での実験からなる幅広いものだったことだ。彼自身が数学者として訓練を受けたにもかかわらず、単なる理論的アプローチに満足しなかったのである。
彼はおそらくノルウェー史上最も偉大な科学者であり、彼の著作の多くは今でも参考文献として使われている。彼はプラズマと電磁気学を宇宙論に持ち込んだことで知られているが、彼のアイデアの多くは広く受け入れられているものの、彼の宇宙論はあまり知られていない。ノーベル物理学賞の選考委員会が彼を推薦しようとしていた矢先、彼は49歳で亡くなった。
ビルケランドは最初の"宇宙科学者"と呼ばれている。彼はわずか31歳でオスロ大学の物理学の正教授となった。
ビルケランドのテレラによって発生した人工オーロラ、写真、彼のノルウェー・オーロラ・ポラリス探検隊より、1902-03年、1908-13年(リンダ・ホール図書館蔵)
ビルケランドのテレラと真空チェンバーの小さな絵が左に描かれた1994年のノルウェーの200クローネ紙幣(notescollector.eu)
シドニー・チャップマン(1888-1970)は、ビルケランドの死後しばらくの間、惑星間磁気圏物理学の分野のリーダーとみなされていた。彼は、数学的モデルに大きく依存するビッグバン論者と非常に似たアプローチをとり、ビルケランドのアイデアの多くを議論することさえ拒否した。彼のモデルによれば、電流は地球から少し離れた球体に限られていた。彼は、地球の磁気圏と太陽から流れてくる電流との間の複雑な三次元的関係を認識することができなかった。彼はビルケランドの考えとは対照的に、電流は電離層に限定され、地球は真空中を移動していると提唱した。彼は間違っていた。
「重力システムは、以前の電気システムの"灰"である」
ハンス・アルヴェーン
アーヴィング・ラングミュア(1881-1957)、米国
アーヴィング・ラングミュア
ラングミュアは1927年、電流と磁場の存在下におけるプラズマの、ほとんど生命体のような自己組織化的挙動を表現するために、血漿 Blood Plasma から借用した"プラズマ Plasma“という用語を初めて使用した。
彼は、実験中にプラズマの電子とイオンが分離するのを観察し、現在、二重層 Double Layers と呼ばれるプラズマ・シースを発見した。二重層はプラズマの挙動における最も重要な特徴のひとつである。彼はまた、原子の説明の一部として"原子価"という用語を定義し、説明した。しかし、ラングミュアが原子の性質に関する我々の理解の発展に与えた影響を認識している教科書はほとんどない。
ラングミュアは、1932年に功績によりノーベル賞を受賞した最初の"アカデミックでない"化学者となった。宇宙で使用できるラングミュア・プローブは、ラングミュアにちなんで命名された。
「不誠実さ(不正行為)はないが、主観的効果や希望的観測、閾値(基準値)の相互作用によって迷わされる点で、人間が自分自身に対して何ができるのかについての理解不足によって、誤った結果に騙されるケースがある。これらは病的な科学の例である。これらは大きな注目を集めた。通常、何百もの論文が発表されている。時には15年、20年と続いた後、徐々に廃れていくこともある」
アーヴィング・ラングミュア
ハンス・アルヴェーン(1908-1995)、現代プラズマ物理学の父、スウェーデン
ハンス・アルヴェーン
アルヴェーンは、一般に現代プラズマ物理学の父と呼ばれている。彼はビルケランドの研究を引き継ぎ、その精神を受け継ぎ、画期的な貢献でノーベル賞を受賞した。しかし、物議を醸す(論争の的になる)ような考えをもっていたため、科学界からの評価は必ずしも高くはなく、生前は慇懃無礼で嘲笑を浴びることも少なくなかった。
実際、1970年までノーベル賞が授与されなかったことは、彼の多くの基本的業績を考えれば、今では奇妙に思える。彼はしばらくの間、国際的な読者を得られない雑誌で発表することを余儀なくされた。彼の考えは、1950年にオックスフォード大学出版局から出版された画期的な著書『宇宙電気力学』によって、ようやく一般の科学者に知られるようになった。
アルヴェーンは科学に対して実践的かつ直観的なアプローチをとり、宇宙論的現象の理論は実験室での実験と一致しなければならないと主張した。("実験室"の定義は、宇宙での実験も含むように広められた)
エンジニアとして出発した彼の方法は、ビッグバン論者たちが一般的に好む、理想化された数学的原理から出発するというアプローチとは正反対だった。
「重力が支配するビッグバンの滑らかで均質な宇宙から、プラズマ過程の影響を強く受けた、現在のような極めて塊状で不均質な宇宙が得られるとは考えたこともなかった」
アルヴェーン
1937年、アルヴェーンは、我々の銀河系には大規模な磁場が存在し、荷電粒子は磁場が及ぼす力によってその中を渦巻き状の軌道を描いて移動していると提唱した。プラズマは磁場を作り出す電流を運んでいた。
「あるプラズマ領域の現象を理解するためには、磁場だけでなく電場や電流もマッピングする必要がある」
ハンス・アルヴェーン
アルヴェーンの理論の多くは、ビルケランドの理論同様、現在ではよく知られているが、彼の研究の宇宙論的な意味合いは、まだ十分に認識されていない。皮肉なことに、その理由のひとつは、これらのアイデアの多くが非常に単純だったからだと言う人もいる。
「査読システムは、平穏な時期には満足のいくものだが、体制側(主流派)が現状を維持しようとする宇宙物理学のような学問分野の革命の時期には満足のいくものではない」
ハンス・アルヴェーン
ウィンストン・H・ボスティック(1916-1991)、アメリカ
ウィンストン・H・ボスティック
ボスティックはプラズモイドという言葉を作った。プラズマ集束とプラズマ渦現象を発見し、ハッブル膨張が同極発生器として働く隣り合う銀河間の反発的相互誘導によって生じることを示す実験室プラズマ実験によって宇宙天体物理学をシミュレートした。彼の研究の多くは、主流科学にはまだ受け入れられていない。
「……過去36年間のプラズマ物理学における私の実験的研究は、非相対論的または相対論的な電子を含むプラズマが、多くの異なる状況下で、自発的に、フォースフリー、最小自由エネルギーで、ベルトラミ形態の渦フィラメントに組織化できることを示してきた」
ウィンストン・H・ボスティック
上記の引用で言及されているエウジェニオ・ベルトラミは、18世紀のイタリアの数学者で、DNAやビルケランド電流に見られるような、らせん状にねじれたフィラメント対の形態を数学的に記述するのに使用できる強力な微分方程式を開発した。ボスティックの研究は、ハンス・アルヴェーンとアンソニー・ペラットによって繰り返し検証されている。
ほとんどの銀河の中心で目撃されるコンパクトなエネルギー活動は(ポピュラーサイエンスが好むブラックホールと呼ばれる数学的抽象概念とは対照的に)プラズマ・フォーカス現象によるものであることはほぼ間違いない。そのため、より強力な望遠鏡で明るい光を見ることができる。
サンダーボルトの記事(プラスモイド、ウィンストン・H・ボスティック生誕100周年に寄せて)
デイヴィッド・ボーム(1917-1992)、アメリカ
ボームはプラズマの理論家であり、彼の名前が付けられた磁化されたプラズマの不安定性と抵抗性を発見した宇宙学者である。
「宇宙は、私たちが以前の状態を知る特権を与えられていない、流動的で果てしなく続く変容である」
デイヴィッド・ボーム
他にも言及すべき人はたくさんいるだろうが、このウェブサイトの目的は、新たに出現したパラダイムを紹介することだ。
今日、増大する科学者、エンジニア、独立した研究者たちが、これらの先駆者たちの仕事を引き継いでいる。彼らは、いまだに主流派に浸透している凝り固まった考え方をものともせず、この挑戦に応じている。詳しくはリンクのページをご覧ください。
要約
ハンス・アルヴェーンとアーヴィング・ラングミュアは共にその業績でノーベル賞を受賞し、クリスティアン・ビルケランドも長生きしていればおそらく受賞していただろう。したがって、宇宙論における彼らの仕事と、この分野における彼らの仕事の意味あいが、ほとんど認識されないままであることは残念(不運)に思われる。
「ソビエトの天体物理学雑誌に掲載するのは問題ないが、アメリカの天体物理学雑誌には私の研究は受け入れられない」
ハンス・アルヴェーン
ビッグバンに対するアルヴェーンの批判は、一部の権威をイライラさせたと言わざるを得ない。特筆すべきは、プラズマのパイオニアたちは皆、反骨精神に燃えており、他人の言葉を繰り返し、通説に従う主張を拒否していたことである。
「壮大な宇宙ドラマを書こうとすれば、必然的に神話に行き着く。時間と空間のますます大きな領域において、知識を無知に代えさせようとすることが科学である」
ハンス・アルヴェーン
プラズマの簡潔な歴史 II
[歴史 II]
ファラデーとマクスウェル
今でこそ、電気と磁気の用語が相伴うことは知られているが、これは必ずしもそうではなく、電気と磁気の関係は必ずしも明確ではなかった。
マイケル・ファラデー(1791-1867)は、針金のコイルの中で磁石を動かすことによって電流を発生させることができると発表したとき、山師で詐欺だと呼ばれた!
ジェームズ・クラーク・マクスウェルは、電気と磁気の関係についての理解を明らかにした。電場は磁場と切り離すことはできない。── その逆もまた然りである。しかし、従来の天文学は、いまだにそれを試みている。
「放電現象は極めて重要であり、それがよりよく理解されれば、おそらく電気の性質だけでなく、気体の性質や宇宙空間に浸透している媒体の性質にも大きな光を投げかけるだろう」
ジェームズ・クラーク・マクスウェル『電気と磁気に関する論文』
主流の宇宙論は、なぜ電気力学をほとんど、あるいはまったく重要視しないのだろうか?
この間違った態度にはいくつかの理由があり、プラズマ宇宙論とビッグバン宇宙論の境界となっている。少し前に分岐点があり、主流の宇宙論は重力のみを扱う道を選び、抽象的な数学に支配された奇妙な場所にたどり着いた。残念なことに、この巨大なものを方向転換させることはほとんど不可能である。
歴史:
ヨハネス・ケプラー(1571-1630年)やアイザック・ニュートン(1643-1727年)のような天才が理論を構築したとき、電気についてはほとんど知られていなかった。(当時は石油とガスが照明だった)
磁気に関する論文はすでに書かれており、天文学のモデルにも磁気が取り入れられているが、主流の理論の基礎は重力と慣性に依存していることに変わりはない。宇宙空間は電気的に無菌であるという誤った前提のもとに動いている。
「ニュートンはプラズマを知らなかった。 今日、彼の弟子たちは何年もかけて、いつ、どのようにプラズマに目をつぶるかを学ぶ訓練を受けている」
メル・アチソン
1800年代後半から1900年代初頭にかけて、電磁気学が宇宙をより深く理解するための最も見込みのある方法だと考えられていた頃、状況は一時的に変化した。実際、当時の科学新聞はそのような憶測で溢れていた。
しかし、あることが起こった。宇宙における電磁気学について議論することがタブー視されるようになった。例えば、アルバート・アインシュタインは、相対性理論の中で電磁気学について言及することはなかったし、彼の数学的理論によってエーテルの概念は事実上排除された。
磁気リコネクションと凍結磁場:
これらの誤りのある概念は、主流派を混乱させる最大の原因だろう。皮肉なことに、凍結磁場の概念はハンス・アルヴェーンによって最初に提唱されたが、彼はすぐに自分の間違いに気づき、その誤りを説明した。残念なことに、彼はこの誤りが続いていることに驚き、後年、もっと時間をかけてこの誤解を正しておけばよかったと思ったという。
「愚かさによって十分に説明できることを、決して悪意に帰してはならないが、悪意を排除してはならない」
ハンロンの剃刀
磁場がプラズマに凍結することはない。これは主流科学が宇宙空間での電流(エネルギー移動)を認めようとしないことの徴候に過ぎない。彼らは、宇宙空間に電気が流れるという考えは、彼らにとって厄介な問題を引き起こすため、磁気ロープなどの用語で話をしたがる。彼らは単純に、この事実と意味のある範囲で向き合うことを拒否している。さらに、磁力線は分解してエネルギーを放出した後、再びつながったり合流したりはしない。
電気工学の引退した教授であるドン・スコットは、この問題をここで詳しく説明している。
心理学:
信念は知覚に深い影響を与えることが知られている。婉曲的な表現が事前の信念の慣性に適合するために使われるという事実を見てほしい。主流派は、宇宙空間に電気現象が存在することを認めるよりも、イオン嵐や電子の雨という言葉で語ることを好む。よくある誤解の説明については、技術的なセクションを参照のこと。
多くの天文現象が"電気"と叫んでいるが、既存のパラダイムの中でそれを解釈するために、詭弁を弄することがあまりにも多い。
「事実は、無視されたからといって存在しなくなるわけではない」
オルダス・ハクスリー
プラズマ中のフィラメント状のビルケランド電流や二重層などは、主流の宇宙論では理解されていないどころか、認識すらされていない! そして、彼らはそれを科学の女王と呼んでいる!
「宇宙空間での電荷分離は不可能である」
そう、これが主流の見解だ。電子とイオンの間の電気的引力は、質量間の引力よりも39桁も大きいので、これらの粒子はすぐにお互いを見つけて中和すると仮定されている。
「人間はときどき真実につまずくが、たいていの人は立ち直り、何事もなかったかのように続ける」
ウィンストン・チャーチル
しかし、それは間違いである。我々は現在、空間における電荷の分離を観測している。したがって、理想化された理論的出発点から推定するのではなく、観測から逆方向に戻るべきであることを強調することが重要である。
プラズマ宇宙の理論は、中性物質から始まるのではない。電荷がすでに分離しているという観測から始まる。
数学:
多くの宇宙探査機が不可解なクラッシュや異常な加速に見舞われている事実を考慮すれば、一般相対性理論は数学に従順であるが、電気力学の状況はそれほど単純ではない。例えば、電圧が相対的な数値である場合、地球の電圧をどのように測定するのだろうか?
太陽や月との関係で電圧を測定するのだろうか?
どのようにすればよいのだろうか?
二つの惑星の間にケーブルを通すのは技術的に難しいが、一般相対性理論の計算の問題は、エキゾチックな仮説で簡単にふさぐことができる!
科学 versus 数学
残念ながら、現在の宇宙論は科学者ではなく数学者によって支配されており、電磁気学は数学的にモデル化するのが難しいことで知られている。だから彼らは目をつぶることを好む。下記の悪い天文学と良い科学の比較を見てほしい。
電磁力学 versus 流体力学
もうひとつのよくある手口は、電気力学的現象を、本当は流体力学にのみ適切な用語で呼ぶことである。"電子の雨"や"イオンの嵐"はその典型例だ。これらは明らかに電気力学的現象であり、"磁気ロープ"も同様である。磁気ロープは実際にはビルケランド電流である。詳しくはテクニカルを参照。
悪い天文学 versus 良い科学
自称"悪い天文学者"であるフィル・プレイトは、電気的宇宙論のあら捜しをして後悔しない人である。彼は最近、エレクトリック・ユニバース・モデルに代理人を通して攻撃の火蓋を切り、天文学は磁場を無視していないと主張した。そのような主張はなされていないので、これは筋違いである。
「磁力は天体物理学において非常に重要なトピックだが(この力は無視されていると嘘をつく似非科学者がいるにもかかわらず)、それはあまり理解されていない。非常に複雑で、天文学ではジョークになるほどだ」
フィル・プレイト、悪い天文学者
本当の問題は、磁場と電流の関係が見落とされていることであり、これは致命的な怠慢である。
「あるプラズマ領域の現象を理解するためには、磁場だけでなく、電場と電流もマッピングする必要がある」
ハンス・アルヴェーン、ノーベル賞受賞者
言い換えれば、磁気を切り離して見ることはできない。少なくともプレイトは、その過程で磁気を恐れていることを認めている。これは大きな意図的でない暴露(隠していることをうっかり漏らすこと)である。
数学と普通の気体の運動論
以下を参照
プラズマ物理学
ウォル・ソーンヒル
オーストラリアの物理学者ウォル・ソーンヒルからの引用は、このテーマに対する主流派の無知の一因となるプラズマを扱うことの難しさについて、さらに背景を説明している。
「プラズマ物理学は二つの平行線で始まった。そのひとつは、100年前から行われている"気体中の放電"の研究である。このアプローチが理論的に洗練されたものになったのは、非常にゆっくりとした歩みだった。ほとんどの理論物理学者は、複雑で扱いにくいこの分野を見下していた。プラズマは縞模様、二重層、さまざまな振動や不安定性を示した。電子温度はガス温度より一桁か二桁大きく、イオン温度はその中間であることがしばしば発見された」
「要するに、数学的にエレガントな理論には不向きな分野だったのだ。もうひとつのアプローチは、高度に発達した通常の気体の運動論から生まれた。限られた量の作業で、この分野をイオン化気体にも拡張できると考えられた。その理論は数学的にエレガントで、プラズマのすべての特性を第一原理から導くと主張した。しかし、実際にはそうではなかった。
問題が複雑なため、多くの近似が必要であったが、それは必ずしも適切なものではなかった。理論は実験物理学とはほとんど接点がなかった。実験室で観察される扱いにくい複雑な現象はすべて無視された…… 当時は電離気体と呼ばれていたプラズマに関する理論は、実験室でのプラズマ研究とは全く無縁のまま開発された。にもかかわらず、あるいはそれゆえに、その理論への信頼は非常に強く、その理論は直接宇宙にも応用された。その結果のひとつがチャップマン・フェラーロ理論であり(総説はアカソフとチャップマン、1972を参照)、ビルケランドのアプローチはほとんど完全に忘れ去られるほど、その理論は受け入れられた。30年、40年の間、ビルケランドの結果は教科書や調査で無視されることが多く、それを復活させ発展させようとする試みはすべて無視された」
「実験的アプローチに対する理論的アプローチの圧倒的な勝利は、理論が実験的に検証可能な予測をするようになるまで続いた。理論から、実験室ではプラズマを簡単に磁場に閉じ込めることができ、熱核によるエネルギー放出が可能な温度まで加熱することができると結論づけられた。熱核反応炉の建設が試みられたとき、理論と現実の衝突は避けられなかった。── その結果は壊滅的だった。
理論は一般に受け入れられていたが、プラズマそのものはそれに従わなかった。太陽が陽極であるというジョーガンズの理論が有効であると言っているわけではない。彼の観察によれば、太陽は熱力学の第二法則に違反しているようで、熱の伝わり方が間違っているのだ。
私の友人であるリロイは、私の記憶が正しければ、このことを、伸ばした腕にライターを持った男の例えで説明しようとしたことがある。太陽は普通の気体の集まりではないので、どちらの提案も正しくない。太陽はプラズマ状の物質の集合体であり、電子の温度は他の部分(プラズマの正常な状態)よりも桁違いに高い」
「アルヴェーンが提案したアプローチは、プラズマ内の電磁力が支配的であるため、エレガントで単純化された通常の気体理論を無視しなければならない」
「アインシュタインは実験を蔑ろにし、純粋な思考に信頼を置くことを好んだ」
ポール・デイヴィス
シンクロトロン放射
1950年、アルヴェーンは同僚のヘルロフソンとカイペンホイヤーとともに、天体源からの非熱放射を初めて同定した。非熱放射は、磁場の存在下で高速運動する電子によって生成されるもので、電波望遠鏡で記録される放射線のほとんどがこのメカニズムに由来するため、天体物理学においてその重要性を過小評価することはできない。
※天体源 astronomical source とは、天体や天体の存在を示唆する(あるいは示す)何かの始まり、あるいは起源である。通常、連続的な信号を発生させるプロセスはすべて、そのような信号の発生源とみなすことができるが、信号または何かを一度だけ発生させる一過性の発生源も存在する。発生源は、例えば電磁放射、星、銀河のような何かを発生させたか、または発生させることができるかもしれない。
当時、プラズマや磁場は、"島宇宙"(銀河)でいっぱいの宇宙ではほとんど関係ないと考えられていたことを考えると、これは驚くべき提案だった。これは、広範な磁場の存在を示す新たな証拠となり、宇宙プラズマによって膨大な量のエネルギーが変換され、蓄積され、放出されている可能性を示している。
この発見より前は、従来の天文学の基本であった物質の3つの状態(固体、液体、気体)を好む視覚的なスペクトルに大きく制限されていた。
「結局は、宇宙が発言権を持っている」
フレッド・ホイル卿
マイケルソン=モーリー実験
アインシュタインの英雄崇拝を疑問視する科学者が増えているが、その大きな理由はマイケルソン=モーリーの実験は無効ではなかったからだ。しかし、科学の主流は、"無効"という結果はエーテルの存在を否定するものだと主張している。
「……ローレンツは、自分の変換方程式を正当化するために、数学に意味を持たせるための、動く物質とエーテルとの相互作用という物理的効果を仮定する必要があると考えた。
物理学はまだ数学に対して実質的な権威を持っていた。エーテルを廃止し、エーテルなしでは意味をなさない数式で表される特性を持つ光波を保持することに何の疑問も持たなかったアインシュタインが、物理学を完全に捨て去り、完全に数学的な理論を提案した最初の人だった……」
ハーバート・ディングル『岐路に立つ科学』
「われわれが質量と呼ぶものは見かけにすぎず、慣性はすべて電磁気的なものであると思われる」
アンリ・ポアンカレ『科学と方法』
──つづき
最後までお読みいただき、ありがとうございました。