欲しいものほど手放せない
どんなものでも欲しいものがある時、執着してしまいがちです。執着すればするほど判断も誤りやすいです。
欲しいものは何としてでも欲しい! 人に取られたくない。ひとり占めしたい。すべてコントロールしたい。際限なく執着心がふくらみます。冷静な判断力を奪います。
「なくなること」が怖いのです。持っていたいのです。手がいくらあっても足りないくらいつかんでいたいのです。
でも、手放さないと、新しいものは入ってきません。つかんでいる人も、つかまれている人も身動きできません。
執着してしまうのは、自分のなにかを証明したいから
物であれば買い直せばいいかもしれませんが、対人関係となると、執着された相手はしがみつかれるのは嫌ですから、気持ちとは反対に離れていきます。私自身、痛い思いをいっぱいしてきました。反省してもあまり役に立たず、同じことの繰り返しを何度もしました。20代の頃のほろ苦い思い出です。
特に恋愛ではそれが見事に出てしまいます。振り返ってみると自分では「愛」だと思っていたものは、大きな勘違いでした。
相手を思いやる気持ちからではなくて、相手に自分が魅力的な人間だと証明したい、自分を特別に扱ってほしい、そんな欲求を満たしたいだけの一方的な気持ちでした。自分に関心を持ってほしいだけの執着心でした。
自分が、自分が、自分が、、、、。相手は自分の欲求を満たしてくれるための対象でした。
これでは相手とのコミュニケーションは形だけです。そのことに何度失敗しても気が付きませんでした。
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これは、異性への執着を手放して次に進むことができたひとつの「おはなし」です。
何にしがみついていますか?
執着するとあなたから魅力が失われます
Eさんには以前、気になる人がいました。初めてあったのは友達との飲み会。感じのいい人だなぁというのが最初の印象でした。
その頃、 Eさんには付き合っていた人がいたので、Yさんは自分には高嶺の花だし、私なんかには興味もないだろうぐらいにしか思っていませんでした。それに、いま付き合っているSさんは、もともと付き合っていた人がいたのに、むりやり奪い取ったので、なおさら気にも留めませんでした。
それから何日か経った頃、友達から「 Yさん、おまえに興味があるみたいだよ」
え~! まさか? 驚きが好奇心に変わりました。ちょっと会ってみたいな。こんなとき、 Eさんの行動は素早いです。
さっそく、友人に頼んで会える手はずを整えます。後ろ髪を引かれる気持ちもありましたが、好奇心?には勝てません。来ていた友達は数人いました。他の人には目もくれず、相手は Yさん一人です。話も弾み、デートの約束をします。
デートの時の Eさんの心得は、最高の自分を見せる、です。やることなすことすべてが順調! それまで付き合っていた Sさんがいたことさえ忘れています。
そんな楽しい日々を過ごしていたある日、Yさんとの何回かのデートのあと、別れ間際に、両親に反対されていると告げられます。
Eさんはいまどき、そんなことで別れることにはならないだろうと軽く受け流していました。ところが、そのうち連絡が付かなくなってしまったのです。電話をすると、家の人から、今はいないと言われます。
手紙も出しました。いくら待っても返事がありません。こうなったら家に行くしかありません。家の近くで待ち伏せをします。何時間も待ちます。現れません。
しばらくして、 Yさんの親しい友人から、おじいちゃん、おばあちゃんのいる故郷に帰ったとい話を耳にします。万事休す。打つ手がありません。
あんなにうまくいっていたのに。あれはいったい何だったんだ? 心は張り裂けそうです。悪い時には悪いことが重なるもので、以前、付き合っていた Sさんに Yさんとのことがばれて、おしまい。適当にごまかして、ほったらかしていたのです。
それからというもの、口惜しさと、理不尽な思いと、裏切った気持ちで、心の中は、ぐちゃぐちゃ。何をどう整理していいのかも分からなくなっていました。自信満々から一気に自信喪失に急転直下。情けない気持ちで自分を責める日々が続きます。
新しい出会いがあっても、うまくいきません。Sさんと Yさんとのことに整理がつかず、Eさんの中ではいまだに終わってないのです。
そんな時、Eさんは何気なく本を読んでいて壺の中に手を入れた猿のイラストに目がいきました。猿が欲しいものが入っている壺に手を入れて、食べたいものを握りしめているので取り出せない図でした。握りしめていたら手に入らないというメッセージです。
これはもしかして、今の自分?
握りしめているものは、過去の痛い経験? 手に入らないものは、新しい出会い? だったらさっさと忘れ去って、次に進めばいい話。でも、そんな都合のいい Eさんを相手の側から見たら、Eさんだって拒否して逃げるに違いありません。
終わらせなくてはいけない。そうでないと一歩も進めない。スッキリしない。Eさんはあの時、何が自分に起きていたのか知りたくなりました。
握りしめていたものが、過去の痛い経験だとすると、痛い経験を握りしめたかったことになります。そんなことは誰もしたくないでしょう。握りしめていたものは、過去の痛い経験というのは、表面的なものだということに気が付きます。
では、握りしめて手放せないほどの欲しいものとはいったいなんだったのだろう? Sさんや Yさんと付き合うことで本当は何が欲しかったのだろう?
Eさんは心のどこかでいつも、最高の自分を見せたい、よく見せたいという欲求を強烈に持っていたことを思い出しました。
それは、相手に自分が魅力的な人間だと証明したい、自分を特別に扱ってほしい、そんな欲求を満たしたいそういう思いでした。Eさんは相手は Sさんや Yさんだけでなく、誰に対しても同じように「証明したい」自分がいたことに気が付きます。それに、ここには一方的な自分の欲求しかありません。相手への思いやりなどは実は小さなものです。認めるのはつらいですが。
Eさんが「愛」とか「愛情」と思っていたものは、相手を思っての感情ではなく、実は自分自身の欲求を満たしたかっただけということがわかりました。
これを相手の立場から見るとどう映るでしょう?
自分の欲求を満足させたいだけの勝手な人。いずれは相手もこのことに気付いて離れていくでしょう。離れていけばいくほど自分の方は相手にしがみつき、しがみつけばしがみつくほど、相手はうんざりして、自分から去っていくでしょう。
Eさんは「自分を魅力的だと証明したい」欲求が、しがみつき執着を生み出し、思いとは逆に相手を遠ざけていたことに気付きました。
Eさんにとって、握りしめていたものは証明したい欲求。手に入れたかったものは相手からの称賛。Eさんはそれを「愛」だと誤解し、結果その三つとも手に入らなかった。
そんなことが分かってきました。
特に男女関係では一方がしがみつけばしがみつくほど、もう片方の相手は嫌になるのは時間の問題だと、Eさんは振り返ることができるようになりました。
欲しいものはあえて、手放す。そうすると、あらかじめ、手に入るはずのものは手に入るし、入らないものは入らない。はっきりします。Eさんはやっと、あの体験を終わらせることができました。
Eさんは「自分を魅力的だと証明したい」欲求についてもっと知りたくなってきました。
最後までお読みいただきありがとうございました。