子どもに「毒親」と言われてしまいました。どう対処すれば?
どの家庭でもありそうな親と子の対立
我が子に突然「毒親」だと言われたらびっくりします。心当たりがあることもありますが、寝耳に水だとしたらオロオロしてしまいます。子どもからすればそれまでため込んだ思いをぶつけるわけですから感情的に激しくなるのでなおさらです。
親として冷静に対処できるのでしょうか。
なかなか言い出せずため込んでいた思いとはどんなことだったのでしょうか?
冷静に受け止め理解してあげることができるのでしょうか?
子どもに「毒親」だと言われてしまったお母さんからの相談で知ったことですが、子どもの立場から「毒親」への対処法はネットに溢れていますが、言われた側の親の立場に立った対処法はあまりないということを知りました。
調べてみると、子どもとの関係を改善したいという気持ちに応える記事は確かに少ないようです。どちらかというと、虐待されて育った子供の対処法や相談された方のおっしゃる通り、毒親とみなす事を助長するような情報が溢れている感じがします。
とはいえ親として、というか人間としてどうかなって感じてしまうかたもいらっしゃるわけで、そういう「真正」の「毒親」に育てられた子の心の傷は癒しがたいものがあります。子供を自分の所有物、モノのように扱い、言葉や身体的な暴力をふるってしまう現実があることは悲しいことです。
この記事は明らかな虐待については扱いません。どこの家庭でもありそうな親と子の対立関係についてです。子と親の確執は永遠のテーマなのかもしれません。
3年間、口を利かなかった父と娘
たまたまテレビを見ていたら、3年間一言も口をきいてない娘と父親が仲直りする番組をやっていました。
並んだ料理を前にして娘と父親が二人きりで対面しています。娘さんはなんとか父親に謝りたいと思い最初のきっかけを見いだそうとしているのですが、なかなか切り出せません。
20分、30分と沈黙の気まずい時間が過ぎてしまいます。父も娘もお互い横を向いて顔を合わせることができません。
やっと娘さんの方が意を決して父親にプレゼントを渡します。父親は何だこれ?って感じで、ぼそぼそっと口を開きます。でも依然として二人の間で会話は始まりません。
次に娘さんは父親が昔好きだった手料理を差し出します。ひと口ふた口食べます。やっと父親のかたくなだった心が溶けてきたようです。
娘さんは3年間口を利かなかったことを詫びます。その理由も伝えます。きっかけとなったのは受験の時の父親の一言でした。そのとき傷ついた思いをやっとのことで伝えます。父は励ますつもりで言ったのだと答えます。
実に3年間の確執の始まりは誤解だったのです。
なぜ、娘さんは伝えたいことをなかなか言い出せなかったのでしょうか?
なぜ、父親は娘を前にして一言も口をきこうとはしなかったのでしょうか?
何が邪魔していたのでしょうか?
似たようなシチュエーションはどこの家庭でも何度か経験されているのではないでしょうか?
なぜ、気まずくなってしまうのでしょうか?
感じてみてください。
あれこれ悩み、結論の出ない考えを頭で考えるのではなく。ただ感じてください。その時の自分の気持ち、子供が感じていただろう気持ちを。
親への非難の下にはどんな気持ちが隠れていたのでしょう?
子どもに、あの時言われたことがすごく悲しかったとか、傷ついたって言われたことはありませんでしたか?
そんな時、どのように対処していましたか?
原因はちょっとした子供への注意だったかもしれません。躾のつもりでした行為かもしれません。いき過ぎた行為だったかもしれません。
もしかしたら覚えてすらいないかもしれません。
された側はいつまでも覚えているものですが、した方の側は案外忘れてしまうものです。そのこと自体も子どもからすれば憤りに油を注ぐことになってしまいます。
言われたら言い返していましたか?
そんな受け取り方をしているからいけないといって叱っていましたか?
それとも最後まで子どもの言い分を聞いてあげていましたか?
非難合戦になりやすい
子どもから親のしてきた子育てについて抗議されたら、どう応えればいいのでしょうか?
きちんと対処できていれば問題は起きないはずです。先ほどの父と娘のようにいつまでも尾を引くこともなかったでしょう。問題が起きるという事は親子の間でコミュニケーションがうまくいっていなかった証拠です。
よくあるパターンは子どもに何か指摘されたとき、すぐに言い返したり反論してしまうパターンではないでしょうか。相手が子どもであろうとなかろうと人に非難されるのは誰にとっても嫌です。
とりわけ子どもは痛いところをついてきます。傷口に塩を刷り込むような感覚になるかもしれません。そうなると非難される側から一時でも早く逃れたくて言い返したくなります。
ところで、なぜ子供は親に抗議しているのでしょうか?
非難することが目的でしょうか?
親にされたことの仕返しが目的でしょうか?
それがないとは言いません。
ですが、抗議したくなる気持ちのもっと下にある本当の動機は何でしょうか?
本当はどうしたかったのでしょうか?
本当はもっと仲良くなりたいのではないでしょうか?
もっと理解しあいたいのではないでしょうか?
もっと近づきたいのではないでしょうか?
あなたが子どもだった時のことを思い出してください。親に対してどんな感情を抱いていましたか? その気持ちは今でも持っていますか?
本当の気持ちにフォーカスしてください
たとえ親への非難や仕返しが目的だとしても、言い返すのはいいやり方ではありません。それは火に油を注ぐような行為です。ケンカになりかねません。言い別れになったとしても、次はもっと大きな非難や仕返しが待っています。反論して抑えてその場は上手く収めたとしても、時限爆弾を埋め込んだようなものです。
ついやってしまいがちな言い返すという方法は大人の成熟したやり方ではありません。むしろ問題を長引かせるまずいやり方です。そんなことはいまさら言われなくても分かっていますよね。
でもなぜかやってしまいます。なぜでしょう?
親のせいでこうなってしまったとか言われるとなおさらです。冷静さを保とうとしても興奮して逆上してしまうかもしれません。
自分の「弱さ」と向き合う
子どもから抗議されたとき、親は自らの「弱さ」と向き合わなければならなくなります。子育てで失敗したこと、至らなかったこと、自らの欠点、隠したいこと、夫婦喧嘩、夫婦の間の様々な未解決の問題、色々な感情が心の中に浮かんできます。
先送りにしてきた見たくもない問題に直面しなくてはなりません。
これがキツイのです。自分の中に同じ思いがあることに気づくからです。
そのうえ、自分が子供の頃味わった辛い感情までも呼び覚まされるかもしれません。
子どもに言われたことは自分自身の問題でもあります。二重に対処しなくてはなりません。ですが、このとき親の中で感じている感情は子どもが感じている感情と同じものです。表面的には対立しているようでいて内面で感じている思いは実は同じです。
ここに親と子が理解しあえる糸口があります。
自分の親に対して言えなかったことと同じことを子どもも感じています
ですから言い出せなくてどうしても言えなかった思い、伝えたくても伝えられなかった思い、我慢してきたこと、その思いを受け取ってあげて欲しいのです。
子供の言い分を聞くのはとても辛いです。
それはあなたが子供のとき親に対して言いたくても言えなかったことと同じだからです。ですから子供の言い分を聞くとあなたが子供の時に感じた受け入れてもらえなかった感情が蘇ってきて辛いのです。
事実関係で言い争っても意味がありません。
相手の間違いや誤解を正しても意味がありません。
考え方の違いを指摘しても意味がありません。
ただ子供は胸につかえている思いを受け取って欲しいだけです。
ただ、こういう思いだという事を伝えたいだけです。
気持ちを知って欲しいだけです。
反論はウンザリなのです。
「弱さ」を受け入れたとき共感できる窓が開きます
自身の「弱さ」を受け入れてみてください。正しさを手放してみてください。至らなかったことは至らなかったこととして受け入れてみてください。難しいことは百も承知です。ですがそれが親としての「強さ」ではないでしょうか?
自らの「弱さ」を受け入れたとき、正しさを手放したとき、子どもの気持ちに共感できる窓が開きます。ハートが開きます。素直になれます。
それは子供に限らずパートナーに対しても同じではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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