予測能力のテスト──ディスコースseries no.9
すべての天体がまだ天になかった時代
金星は太陽系が始まって以来、他の惑星と同じように存在したと思っている人が大半だと思います。私も以前はそう思っていました。古代の文献には金星は登場しないそうです。無いのです。
どこに行っちゃったの? というか、どこから来たの?
ヴェリコフスキーは金星について下記のように記しています。
(引用部分は青色)
西暦前2000年から1500年の間に金星が誕生した、と断言することは、西暦前2000年より以前には四惑星が見られるだけで、この時代の天文図には、金星が見つけられないと仮定することでもある。
西暦前3103年と目される古代ヒンズーの惑星表には、目で見られる惑星の中で、金星だけが欠けている。古代のバラモン(インド)は五惑星の体系を知らなかったし、後世(「中世」)になって、はじめてバラモンは五惑星を口にしている。
バビロニア天文学もまた、四惑星の体系を持っていた。古代の祈りの中では、土星、木星、火星、水星は呼びかけられるが、金星は抜けており、人々は、バビロニアの古代天文学の四惑星体系について語っている。これら四惑星の体系、それから、金星が他の惑星より目につくにもかかわらず、古代ヒンズー人もバビロニア人も、空に金星を認め得なかったことは、惑星の中に金星がいなかったとしない限り、不可能である。
後代になると、「金星は『大きな星たちに加わった大きな星』との名称を受けた。大きな星たちとは、いうまでもなく、水・火・木・土の四惑星であり……金星は第五惑星として、これに加わったのである。」
アポロニウス・ロディウスは、「すべての天体がまだ天になかった」時代について述べている。
金星が彗星であった時代には、金星には尾があった。
コロンブスの渡来以前に書かれたメキシコ人の古い伝説には、金星が煙を吐いていたと記してある。「煙を吐く星とはシトラエ・コロハのことであって、スペイン人は、これを金星と呼ぶ。」
……
メキシコに関する16世紀のスペイン学者サハグンは、メキシコ人は彗星のことを「煙吐く星」と呼んだと記している。メキシコ人は金星を「煙吐く星」と呼んだ以上、彼らは金星を彗星だと考えたのだ、と結論してもよいであろう。
ヴェーダの中にも、金星は煙を吐く火のように見えるといっている。明らかにこの星は昼間は暗く、夜になると輝く尾を持っていたのである。金星が古い時代に持っていたこの尾は、ユダヤ伝経中のシャバト篇に極めて簡潔な形で記されている。「金星から火が垂れ下がっている。」
この現象は、カルデア人が記録している。金星は「ひげがあるといわれた。」これと同じいい方(ひげのこと)が、近代天文学で彗星のことを記述する時に用いられる。
『衝突する宇宙』(法政大学出版局)より引用
予測能力のテスト The Tests of Predictive Ability
理論科学における発見の原則で、予測能力よりも優先度の高いものはありません。予測能力とは、未来を予言するという意味ではなく、既知の事実を新たな視点から説明し、さらには論理的に推論する能力のことです。
このシリーズでは、何百もの神話的・象徴的なアーキタイプを取り上げます。そして、ここで再現された出来事に基づいて期待されるあらゆるテーマが、世界規模で、しかも非常に詳細に発見されることを臆することなく主張します。
前回までに、古代の天地創造の伝説における土星の役割、黄金時代の神話、古代の太陽神としての土星、太陽の光を受けて回転する土星の三日月、そして、それらを支えているのが、グレート・コンジャンクション、または太古の時代のパーフェクト・コンジャンクションとして記憶されている惑星の極配置であり、最後にはその配置が壊滅的に破壊されるという、世界的な”終末論”の原因となっていることを簡単に説明しました。
完全な再構成では、最も活動的なふたつの天体は惑星の金星と火星であり、このシリーズではまだそのストーリーを列挙していません。
この再構築の利点は、世界的な象徴を具体的な天の挑発 provocation の光の中で見ることができることです。
provocation:挑発、怒らすこと、立腹、憤激、怒らせる原因
その視点に立てば、アーキタイプはジグソーパズルのピースのようにぴったりと収まります。実際、母なる女神と戦士のヒーローにまつわるすべてのアーキタイプは、専門家が見逃しているものも含めて、極軸整列にあるふたつの惑星と、世界の伝統におけるそのユニークな同列に並べられている史実にたどり着きます。
その第一歩として、私たちは母なる女神の惑星的なアイデンティティーを認識すればよいのです。
最もよく記録されている古代文化では、女神は一貫して、目に見える5つの惑星のうちのひとつだけと認識されています。金星は、受け入れられた説明(異存のない説明)のない謎の星です。
古代の天文学では、金星は典型的な星の女神であり、太古の太陽の中心にある、放射する目、心臓、魂と一貫して結びついていることが明らかになっています。とんでもない考えですが、天文学発祥の地、古代メソポタミアから伝わってきた歴史的事実です。
私たちが再構築するのは、神話を作る想像力が、放電される金星の光り輝くストリーマの中に、古風な太陽神の生き生きとした生命を見たということです。
しかし、金星が定位置から外れたことで重大な転機が訪れました。
[天の栄光は]
[天国の栄光は]
神話の言葉では、これは普遍的な統治者の死や無力化を意味していました。
この逸脱(金星が定位置から外れたこと)により、金星の放電ストリーマは無秩序なフィラメント状に姿を変え、彗星に関する世界的な迷信や占星術的な信念を引き起こしました。
[女神の普遍性]
すべては彗星の神話的原型である金星にたどり着きます。これらの出来事は、普遍的なパラドックスを完全に解決するでしょう。
すなわち、愛らしい女神は、怒りや嘆きの女神に変身し、乱れた髪を後ろに引きながら空で荒れ狂うのです。
※ キールティムカ
Kirtimukhaとは、インドや東南アジアのヒンドゥー教寺院建築の図像によく見られる。巨大な牙と口を開けた飲み込むような獰猛な怪物の顔の名前。仏教建築にもよく見られる。悪魔の仮面としての役割を果たしており、陰惨で畏怖の念を抱かせる
それが大彗星の原型であり、怒った女神の炎のような髪の毛や、荒れ狂う獅子のように描かれることが多いのです。世界中で記録されている蛇や龍のような女神の姿は、まさに同じ出来事、逸脱(金星が定位置から外れたこと)する目と心と魂がとった螺旋状の形をなぞることになります。いつもこの女性の蛇の形が、大彗星としての金星へと導いてくれます。
その対象は膨大であり、ここで紹介した簡単なメモは、膨大な証拠のライブラリーへの扉を開くものでしかありません。この証拠をテーマごとに取り上げていきます。
しかし、扉を開くためには、普遍的な女神と宇宙的な戦士とのつながりや、すべてのものに明らかな参照の対象があるという、驚くほど具体的な感触でこのつながりを見る必要があるでしょう。
そのためには、次のテーマである極軸整列の進化における火星の役割を詳しく調べる必要があります。
──おわり
動画コメントから
Jon Mallary
カリフォルニアのロックアート。金星が土星から飛び出して、太陽と一直線になって私たちの目の前に現れたのか、それとも火星がその間にあったのか。その中間にあるはずだ。
ThunderboltsProject
古代の太陽神(土星)の中心から金星が現れたという記憶は、ガス惑星から惑星が”飛び出す”ことを必要としていないことを覚えておいてください。題材は、極軸整列によって引き起こされた古代神話的な解釈です。
オリジナルの状態では、金星は軸上に現れポーラーパワー土星 the polar power Saturn のそびえ立つ姿の中心に視覚的に近い位置にあります。その位置からの視覚的なずれは、逸脱する目、心、魂の物語でした。このテーマは、あらゆる主要な文化で確認することができ、このシリーズでじっくりと扱っていきます。
A MTZ
なぜ惑星が人や神として描かれるのですか?
ThunderboltsProject
世界各地の岩に刻まれた初期の描写は、より事実に即した傾向があります。しかし、人間であれ動物をかたどったものであれ、”個性”は様々な要因が重なって生まれるものです。例えば、三日月を輝くウシの角に見立て、人間の両腕を伸ばしたように見立てたり、軸となる柱を一本の足に見立てたりするような率直な形があります。また、以前は区別されていなかった天空の”海”から、観察された形態が一貫した進化を暗示していることには知的な目的意識を考慮する必要があります。このシリーズでは、神話的イメージの長い時間をかけた進化について多くのニュアンスを取り上げます。
最後までお読みいただきありがとうございました