バイバイ1991-2022

アメリカ一極支配の30年間が終わった

ペペ・エスコバル氏の「バイバイ1991-2022」翻訳記事です。
タイトルにある1991年に何があったのでしょうか。ウィキの「1991年」から、いくつか拾い出してみます。
●多国籍軍のイラク空爆開始により湾岸戦争勃発
●日本政府が多国籍軍に110億円の追加支援を決定
●ワルシャワ条約機構解体
●ソビエト連邦共産党が解散
●北朝鮮を電撃訪問した「世界基督教統一神霊協会」(統一教会)教祖の文鮮明牧師が金日成主席と会談
●ソビエト連邦崩壊
湾岸戦争が勃発し、ワルシャワ条約機構解体、存在意義をなくしたNATOは存続し、ソビエト連邦崩壊。そして、アメリカが”俺が殿様”の一極支配を宣言し、2022年、一極支配の終焉と多極化の動きが顕著になりました。

ですから、この約30年間はアメリカ一極支配の始まりと崩壊の期間と言えるかもしれません。

ペペ・エスコバル氏は「2023年は……NATOが絶対絶命の状態になるところから始まる」と言います。ウクライナは既に破産しています。アメリカとEU、NATOの「最後のウクライナ兵まで戦え」という、停戦を模索するのではなく、けしかける支援によって生きながらえている状態です。
ですから「残りかすのウクライナと東のノボロシヤの間の分割という、議論の余地のない事実を地上にもたらすに違いない」
そして「多国籍企業のハゲタカが、無償で土地を奪い、どんなちっぽけな生産的資産であれ、残っている可能性があるものを奪うだろう」
「まじめな軍事アナリストなら、アメリカ人も含めて誰もが、ロシア軍と軍産複合体がソ連末期のものよりも優れたシステムであり、現在のアメリカや他のNATO諸国のものよりもはるかに優れていることを知っている」
「2022年、ソ連崩壊後に構築された”ルールに基づく国際秩序”の最終的な限界点として、ひとつの時代が終焉した」
「ウクライナにおけるNATO対ロシアの戦争は、”新グレートゲーム”の歯車に過ぎない。グローバル・サウスにとって本当に重要なのは、……ユーラシア、そしてそれ以外が統合プロセスをどう調整していくかということである」
「影響力を拡大しようと奮闘する国々は数多くあるが、そのすべてが多極化、あるいは習近平の造語で言うところの”平和的近代化”に賭けており、”永遠の戦争”ではない」

2023年、”新グレートゲーム”はどう展開していくのでしょうか? 
”永遠の戦争”を続けたい軍産複合体、医療業界、そこから利益を得る科学者、専門家、メディア、官僚エリート、庶民のことなど、これっぽちも心配していない、代表もしていない政治家、まとめて嘘つき。それらと庶民の対立がますます表面化していくのではないでしょうか。国家レベルでは、一極支配 対 多極化。社会生活レベルでは、嘘つき 対 庶民。

バイバイ1991-2022

Bye bye 1991-2022
January 10, 2023
by Pepe Escobar, posted with the author’s permission and widely cross-posted
バイバイ1991-2022
ペペ・エスコバル著、著者の許可を得て掲載、広くクロスポストされている。
※画像はこちらで入れました。

アドミラル ゴルシコフ フリゲート艦がジルコン(ツィルコン)極超音速ミサイルを発射(クレジット: ロシア国防省)
アドミラル ゴルシコフ フリゲート艦がジルコン(ツィルコン)極超音速ミサイルを発射(クレジット: ロシア国防省)

2023年は、ロシアのショイグ国防大臣が、ロシア海軍のフリゲート艦アドミラル・ゴルシコフが現在ツアー中であることを発表し、NATOが絶対絶命の状態になるところから始まる──ミスター・ジルコンの超音速・名刺一式を添えて。

このビジネスツアーは大西洋とインド洋を網羅し、もちろんローマ帝国のかつてのマーレ・ノストラム(我らが海 古代ローマにおける地中海の呼称)である地中海も含まれている。徘徊するミスター・ジルコンはウクライナ戦争とは全く関係がない。キエフのサイコ集団よりはるかに大きな魚のフライ(電気椅子で処刑される、の意味もある)を揚げることになったとき、次に何が起こるかを示している。

2022年の終わりは、大きなウクライナ交渉という魚のフライを封印した。それは今、ホットプレートで提供され、完全に消化された。モスクワは、”合意不能な”衰退しつつある大国を信用する理由が全くないことを痛感させた。

だから、ダッカのタクシー運転手でさえ、評判の”冬期攻勢”がいつ始まり、どこまで続くのかに賭けている。ハルマゲドン将軍の前途は明らかだ。ステロイド(筋肉増強剤)を使った全面的な非軍事化と非電化、そして、キエフのサイコが慈悲を請うまで、ロシア軍にできるだけ負担をかけずにウクライナ人を大量に粉砕することだ。そうでない場合もある。

2022年末にホットプレートに乗ったもうひとつの大きな魚フライは、2014年のミンスク合意である。料理人は(”ウクライナのための時間稼ぎの試み”)メルケル前首相にほかならない。暗示されているのは、必ずしも煙の出ている銃ではない。米国の外交政策を担当するシュトラウス主義者、ネオコン、ネオリベラルのコンビネーションの戦略は、当初から、ロシアに対して代理戦争による永遠の戦争を放つことだった。

メルケルは、ロシア人に面と向かって、クリプトソプラノcrypto-Soprano マイク・ポンペオのように嘘をつき、その後、何年も何度も何度も嘘をつき、何かを企んでいたのかもしれない。それはモスクワにとって恥ずかしいことではなく、ベルリンにとって恥ずかしいことだ。帝国への完全な隷属をまたもや生々しく示すことになった。

メルクリウス(マーキュリー、神々の使者で、雄弁家の守護神)の現代的体現者であるロシア外務省のマリア・ザハロワの反応も同様に興味深い。メルケルの告白は、ロシアとウクライナの代理戦争を誘発した西側政治家の責任を裁く法廷の具体的理由──証拠──として使えるかもしれない。

誰も明らかにオフレコで確認することはないだろう。しかし、これらはすべて、進化しつつあるロシアとドイツの秘密取引の一部であり、ドイツが少なくとも一部の主権を回復することにつながる可能性がある。

NATOの魚のフライを揚げる時

一方、ロシア安全保障会議のドミトリー・メドヴェージェフ副議長は、完全にプラグを抜いた姿を明らかに楽しみながら、”交渉という魚のフライ”の英雄物語を展開した。彼は「すべての国への最後の警告」として、次のように述べた。
「アングロサクソン世界との取引はありえない。[なぜなら]アングロサクソンは泥棒であり、詐欺師であり、何でもできるカード詐欺師だからだ……。これからは、新しい世代の賢明な政治家が権力を握るまで、彼ら抜きでやっていこう……。西側諸国には、いかなる理由であれ、何事も対処できる人はいない」

メドベージェフは、習近平とプーチンの盛大なズームの数日前に、北京で習近平にほぼ同じ台詞を直接語っている。これは、2022年の非公式な幕引きのようなもので、ロシアと中国の戦略的パートナーシップは完全に同期していた。

戦争面では、ハルマゲドンの新しい──攻撃的な──ノリ groove は、今後数ヶ月の間に、西の機能不全のブラックホール、すなわち、残りかすのウクライナと東のノボロシヤの間の分割という、議論の余地のない事実を地上にもたらすに違いない。

IMFでさえ、今やブラックホールへの追加資金投入に消極的になっている。キエフの2023年の予算は、360億ドルという──非現実的な──赤字を抱えている。予算の半分は軍事関連である。2022年の実質的な赤字は毎月約50億ドルで、今後も膨らむことは必至だ。

キエフ経済大学のティモフィー・ミロヴァノフ教授は、IMFがウクライナの”債務の持続可能性”を心配している(債務不履行)、というとんでもないことを言い出した。
「IMFでさえ心配しているのなら、個人投資家は何を考えているのか想像してみてください」と付け加えた。
ウクライナに”投資”することはないだろう。多国籍企業のハゲタカが、無償で土地を奪い、どんなちっぽけな生産的資産であれ、残っている可能性があるものを奪うだろう。

2023年にフライにされる最大の魚は、間違いなくNATOの神話である。まじめな軍事アナリストなら、アメリカ人も含めて誰もが、ロシア軍と軍産複合体がソ連末期のものよりも優れたシステムであり、現在のアメリカや他のNATO諸国のものよりもはるかに優れていることを知っている。

ドイツ(EU)、ロシア、中国の間の可能な同盟に対するマッキンダー式の最終的な打撃──ウクライナにおけるアメリカの代理戦争の本当の背後にあるもの──は、シュトラウス派の淫夢(射精 wet dream)に従って進行しているわけではない。

かつての帝国の臣下であるサダム・フセインは、ペトロダラーを回避しようとしたために政権交代を余儀なくされた。リヤドで習近平が発表したように「3年から5年のうちに」ペトロユアン(湾岸諸国から石油を購入する際に人民元を使用する)の台頭は避けられないだろう。北京への衝撃と畏怖ではそれを防ぐことはできない。

2008年、ロシアはミサイル部隊の大規模な再建と陸上兵力の近代化14ヵ年計画に着手した。ミスター・ジルコンが極超音速の名刺をマーレ・ノストラム(地中海)に差し出したのは、ビッグ・ピクチャーのほんの一部に過ぎない。

米国パワーの神話

CIAは屈辱的な撤退でアフガニスタンを見捨てた。ヘロインの密輸ルートを捨ててまで、ウクライナに移転し、同じ古い壊れたレコードを演奏し続けるために。CIAは、MI6やその他の組織と連携して、ロシアのインフラの破壊工作を続けている背後にいる。遅かれ早かれ、反撃を受けることになるだろう。

CIAの工作員を含め、ほとんどの人は、例えばニューヨークがジョージ・ワシントン橋の爆破というたった一回の操作で破壊される可能性があることを知らないかもしれない。橋がなければ食料や必要物資のほとんどを供給することができない。ニューヨークの電力網は中央制御装置を停電させることによって破壊することができ、元に戻すには1年かかるかもしれない。

ウクライナの現状は、無限に広がる戦争の霧に包まれても、まだ小競り合いに過ぎない。本当の戦争はまだ始まっていないのだ。でも、もうすぐ始まるかもしれない。

ウクライナとポーランドを除けば、NATO軍に特筆すべきものはない。ドイツは笑いぐさの2日分の弾薬しか持っていない。トルコは、ウクライナでロシア軍と戦うために一人の兵士も送らないだろう。

ヨーロッパに駐留する8万人の米軍兵士のうち、武器を持っているのは10%だけだ。最近、2万人が追加されたが、大したことはない。もしアメリカ人がヨーロッパで軍隊を動かしたら──それ自体かなり馬鹿げたことだが──物資や援軍を上陸させる場所がなくなってしまうだろう。空港や港はすべて、ロシアの極超音速ミサイルによって数分のうちに破壊されてしまうだろう──ヨーロッパ大陸だけでなく、イギリスも含めて。

さらに、石油や天然ガスのロッテルダムなどの燃料センターもすべて破壊され、ヨーロッパにあるアメリカの主要基地、すなわちドイツのグラーフェンヴェーア、ホーエンフェルス、ラムシュタイン、バウムホルダー、ヴィルセック、スパンダーレム、ヴィースバーデン(陸・空軍)、イタリアのアヴィアーノ空軍基地、ポルトガル領アゾレス諸島のラジェス航空基地、スペインのロタ海軍基地、トルコのインジルリク空軍基地、英国のレイクンヒースとミルデンホールの英空軍基地を含む軍事施設はすべて破壊されるだろう。

戦闘機も爆撃機も、着陸後、あるいは着陸中に破壊される。アウトバーン以外に着陸する場所はなく、カモにされてしまう。

パトリオットミサイルは役に立たない。イエメンから飛んでくるフーシ派のミサイルを打ち落とそうとしたサウジアラビアで、グローバルサウス全体が見たとおりである。イスラエルの”アイアン・ドーム”は、ガザから飛んでくる旧式のミサイルをすべて打ち落とすことさえできない。

米国の軍事力は、フライにされる魚のような最高の神話(作り話)である。基本的に彼らは、ウクライナ軍のような代理人の背後に隠れている。米軍は、1991年と2003年のイラクのように、砂漠の真ん中で空からの援護もなく、無力な相手と戦う七面鳥を狙う射撃大会(七面鳥が大きくて動きが鈍いことから、朝飯前の仕事をも意味する)の時以外は、何の価値もないのである。そして、NATOがタリバンに完全に屈辱を受けたことを決して忘れてはならない。

BRICS

最後の限界点

2022年、ソ連崩壊後に構築された”ルールに基づく国際秩序”の最終的な限界点として、ひとつの時代が終焉した。

帝国は、ウクライナへの代理戦争、AUKUS(オーストラリア、英国、米国の間の3国間の安全保障協定)、台湾ヒステリーなど、あらゆるものを投げつけて、1991年の頃に彼らが作り上げた仕組みを崩壊させるべく、絶望的な状況に突入した。

グローバリゼーションの巻き返しは、帝国自身によって実行されている。それは、EUのエネルギー市場をロシアから盗み、不運な属国が超高価な米国のエネルギーを買うことから、半導体のサプライチェーン全体を破壊し、中国を”孤立”させるために無理やり自分たちの周りに再構築することまで多岐にわたっている。

ウクライナにおけるNATO対ロシアの戦争は、”新グレートゲーム”の歯車に過ぎない。グローバル・サウスにとって本当に重要なのは、BRI(一帯一路構想)からBRICS+(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の拡大、SCO(上海協力機構)からINSTC(国際南北輸送回廊)、Opec+(石油輸出国機構とロシアを含む同盟国)から大ユーラシア・パートナーシップまで、ユーラシア、そしてそれ以外が統合プロセスをどう調整していくかということである。

我々は1914年、あるいは1939年以前の世界の姿に、限られた意味においてのみ戻っている。影響力を拡大しようと奮闘する国々は数多くあるが、そのすべてが多極化、あるいは習近平の造語で言うところの”平和的近代化”に賭けており、”永遠の戦争”ではないのだ。中国、ロシア、インド、イラン、インドネシア、その他である。

だから、1991-2022年とはおさらばだ。
ひと仕事が今始まる。
ぶっ飛ぶ on crack 新グレートゲームへようこそ。

──おわり

マッキンダーのハートランド理論とは?

What Is Mackinder’s Heartland Theory?

PeskyMonkey / Getty Images
PeskyMonkey / Getty Images

マット・ローゼンバーグ著
更新日:2018年9月10日

サー・ハルフォード・ジョン・マッキンダーはイギリスの地理学者で、1904年に「歴史の地理的な中心 The Geographical Pivot of History」という論文を書いた。マッキンダーの論文は、東欧の支配が世界の支配に不可欠であることを示唆した。マッキンダーは、ハートランド理論として知られるようになった次のようなことを提唱した。

東欧を支配する者はハートランドを支配する
ハートランドを支配する者が世界の島を支配する
世界の島を支配する者が世界を支配する
マッキンダーは、”ハートランド”を”中心(かなめ)地域”、”ユーラシアの核”とも呼び、ヨーロッパとアジア全体を”世界の島”と考えた。

現代戦の時代には、マッキンダーの理論は時代遅れであると広く考えられている。マッキンダーが理論を提唱した当時は、世界史を陸海の大国間の争いという文脈でのみ捉えていた。マッキンダーは、大海原をうまく航行できない国に対して、大きな海軍を持つ国が有利であるとしたのである。もちろん、現代では航空機の利用により、領土の支配や防衛能力は大きく変化している。

(中略)

ナチス・ドイツへの影響の可能性

マッキンダーの理論がナチスドイツのヨーロッパ征服に影響を与えたのではないかと推測する歴史家もいる(ただし、第二次世界大戦につながるドイツの東進は、たまたまマッキンダーのハートランド理論と重なっただけだと考える人も多いようだ)。

地政学(ドイツ人はジオポリティークと呼ぶ)の概念は、1905年にスウェーデンの政治学者ルドルフ・シェレンによって提唱された。その中心は政治地理学であり、マッキンダーのハートランド理論とフリードリッヒ・ラッツェルの国家の有機的性質に関する理論を組み合わせたものであった。地政学的理論は、自国の必要性に基づいて拡張しようとする国の試みを正当化するために用いられた。

1920年代、ドイツの地理学者カール・ハウスホーファーは、ドイツが近隣諸国を侵略することを “拡張"と見なし、それを支持するために地政学理論を利用した。ハウスホーファーは、ドイツのような人口密度の高い国は、人口の少ない国の領土を拡大し、獲得することが許され、その権利があるとしたのである。

もちろん、アドルフ・ヒトラーは、ドイツが”劣等民族”と呼ばれる人々の土地を獲得する何らかの”道徳的権利”を持っているという、より悪い考えを持っていた。しかし、ハウスホーファーの地政学理論は、疑似科学を使ってヒトラーの第三帝国を拡大するための裏付けとなったのである。

マッキンダーの理論が与えたその他の影響

マッキンダーの理論は、ソ連が旧東欧諸国を支配していたため、ソ連とアメリカの冷戦時代の西側諸国の戦略的思考にも影響を与えたと思われる。

マッキンダーが 1904 年に発行した「ハートランド理論」の地図
マッキンダーが 1904 年に発行した「ハートランド理論」の地図

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
@kiyo18383090


Posted by kiyo.I