親の気持ち子の気持ち 本当の気持ち伝えていますか?
もしあのとき、口うるさく言うだけでなくその下にある本当の気持ちを伝えていたら、誤解されずにすんだのかもしれません。
子供の頃、両親に 「こうしなさい、○○しなさい」と言われたことがあると思います。その中で、何度も言われて忘れられない言葉はありますか?
両親にとっては子供のためを思っての言葉でも、子供にとっては言いつけ通りにできなければ重荷に感じます。自分が悪いと感じているところに更に追い打ちをかけるように同じ言葉をかけられるとうんざりして嫌になってきます。
一生懸命、期待に応えようとして両親に「よい子」のフリをしたり、期待に応えられなければ、惨めな気持ちになり反発して「悪い子」をしてみたり・・・。「よい子」でも「悪い子」でも、相手に合わせているうちに「本当の自分」を見失っていきます。
その始まりは誤解です。
耳にタコができるくらい聞き飽きた言葉に込められた両親の思いはなんだったのでしょうか? その言葉の裏にある本当の気持ちはなんだったのでしょうか?
その言葉の裏にある本当の気持ちを理解できていれば、誤解して反目せずにすんだのかもしれません。
もはや過去の話です。
でも、手遅れではありません。いま大切な人に本当の気持ちを伝えることで、お互いを理解しあい新しい関係が生まれるかもしれません。
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この「ものがたり」は大切な人たちとの関係を「本物」にしていくお話です。
親の気持ち、子の気持ち
これはかなりまずい事態かも?
Fさんは先日のパートナーとの間で起きたケンカが気になっていました。口論になって暴言を吐いてしまったのです。
「なにやってんの! いつもぐずぐずしてるからだよ!」
これまでのわだかまりが一気に口をついて出てしまいました。Fさんのパートナーはその場で凍り付いてしまいました。
気まずい雰囲気。言いすぎてしまった。でも、後の祭り。
今回起きたことは前々から心の中にあったわだかまりが爆発したにすぎませんでした。
これはなんとかしなくては。取り返しのつかないことになるかも?
どうすればいいんだろう? と考えていた時、子供の頃あったことが頭に浮かんできました。
Fさんは子供の時、親からよく言われていた言葉があります。
口を開けば「勉強しなさい、勉強しなさい、勉強しなさい、、、」自分の親からこれ以外の言葉を聞いた事ってあったっけ? 思い出そうとしても他にかけられた言葉が浮かびません。
ある時、大好きな雑誌を読んでいるところを見つかり、燃やされてしまったことがありました。大事な1ページ1ページが燃えていくところを呆然として見つめているしかなかったことを今でも思い出します。
勉強もせず、勉強以外のことにうつつを抜かしていたことが理由だったとしても、なんて親なんだという憤りを強く感じた瞬間でした。
口うるさく言われていても、成績がいい時は幸せでした。すべてがうまくいって順風満帆、優越感に浸れました。親も見返せるし、優等生、秀才と周囲から言われ、その上もてるし、欲しいものは何でも手に入るように思えました。
しかし、いい時はそう長くは続きません。山あれば谷あり、下り坂がやってきます。これまでうまくいっていたサイクルが逆回転し始めます。勉強にも身が入りません。
「勉強しなさい」の言葉が強迫観念のように感じていました。
ハッとFさんの中で、「勉強する」自分はいい子。「勉強しない」自分は悪い子、という気持ちがあったことを思い出しました。
勉強をしてないと、してないだけで、何か自分は悪いことをしているのではないだろうか? と思えてくるのですから不思議でした。そんな時は、後ろから何かに追われているような気さえしていました。
Fさんにとって、この感覚は大人になった今でも残っています。染みついています。何か体を動かしていないと、なんでもいいから何かしていないと、悪いことをしているような気がしてしまうのです。この気持ちから逃れるために自分に鞭打ってハードワークをしてきたのかもしれません。
なんにもしていないように見える人がいたら、ついサボっているという風に批判的に見えてくるのです。
「勉強しなさい」の繰り返しが、知らないうちにこんな判断の物差しを作ってしまっていることにFさんは我ながらびっくりしてしまいました。無意識にこの物差しを基準にしてまわりの人たちを判断してしまっていたのです。
しかし、大人になってFさんが親の立場になった時、「勉強しなさい」と言った親の気持ちが理解できるようになりました。きっと将来のことを心配して子供のためを思っての言葉だったのでしょう。しかし許せない自分もいます。
子供のとき親がどんな気持ちでその言葉を発していたかなど分かりようがありませんでした。その言葉に反発するだけでした。多分、Fさんの親もその親である祖父母から同じように言われてきたのかもしれません。
親から言われたこと、されたことを自分の子にしてしまう。許せない気持ちが伝わってゆく。許せない気持ちは仕返ししたい気持ちに変化する。
もしあの頃「勉強しなさい」と言うだけでなくその下にある本当の気持ちを伝えてくれていたら、誤解せずにすんだのかもしれません。
そんな思いにふけっていたFさんはハッとしました。そうだ、今だ。パートナーに今思ったことを正直に伝えればいいんだ。
少し勇気がいりました。パートナーに思い切って伝えることにしました。
Fさんにとって本当の気持ちを伝えるコミュニケーションが始まったようです。
大切な人に、本当の気持ちを伝えることで、新しい関係が生まれます。
期待に一生懸命応えようとして「よい子」をしたり、何度も言われて反発し期待に応えることをあきらめて「悪い子」をしてみたり、相手に合わせて「本当の自分」を見失ってしまったのです。それは誤解から始まっています。その下にある本当の気持ちを伝えてくれていたら誤解せずにすんだのかもしれません。今からでも遅くありません。今度はあなたが本当の気持ちを子どもやパートナーに伝えていく番です。
最後までお読みいただきありがとうございました。