イエメンはいかにすべてを変えたか

How Yemen changed everything
In a single move, Yemen’s Ansarallah has checkmated the west and its rules-based order.
Pepe Escobar
DEC 28, 2023

イエメンのアンサール・アッラー(フーシ)は、たった一手で、西側諸国とそのルールに基づく秩序をチェックメイトした。
ペペ・エスコバル
2023年12月28日

Photo Credit: The Cradle

Photo Credit: The Cradle

インド北部で発明されようと、中国東部で発明されようと、ペルシャからトルキスタンまでの中央アジアで発明されようと、チェスはアジアのゲームである。チェスでは、単純なポーン(将棋の歩に当たる)がチェスボード全体をひっくり返すことができるときが必ずやってくる。たいていは後手番で、その効果を計算することはできない。

そう、ポーンは劇的な(影響力の強大な)チェックメイトを課すことができる。私たちは今、地政学的にそこにいる。

チェス盤上の一手、すなわちイエメンのアンサール・アッラーによる紅海封鎖の驚異と注意深さは、世界の海運、サプライチェーン、経済回廊戦争にとどまらず、連鎖的な影響を及ぼす。称賛されていた米海軍の戦力投射が無用の長物と化したことは言うまでもない。

イエメンの抵抗運動であるアンサール・アッラーは、イスラエルに関連した、またはイスラエル行きの船舶はすべて妨害されると明言している。西側諸国がこれに苛立ち、自分たちが標的にされることを想像している一方で、それ以外の国々は、他のすべての船舶が自由に通航できることを十分に理解している。ロシアのタンカーは、中国、イラン、グローバル・サウスの船舶と同様に、バブ・エル・マンデブ(最狭部:33km)と紅海を妨害されることなく移動し続けている。

“ルールに基づく秩序"に対するこの挑戦に動揺しているのは覇権国だけだ。法を犯すイスラエルにエネルギーや物資を供給する西側の船舶が妨害され、サプライチェーンが断ち切られ、深刻な危機に陥っていることに憤慨している。ピンポイントで狙われているのは、すでに大出血しているイスラエル経済だ。イエメンの一手が、帝国の制裁の連発よりも効率的であることを証明している。

この一手がパラダイムシフト(後戻りできない転換)になる可能性が、覇権国の卒中に拍車をかけている。特に、帝国の屈辱がパラダイムシフトに深く組み込まれているからだ。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は今、オフレコで紛れもないメッセージを送っている。スエズ運河は思い出さないように。進むべき道は北極海航路だ、ロシアと中国の戦略的パートナーシップの枠組みの中で、中国は北極シルクロードと呼んでいる。

北東航路と北西航路の航路図

北東航路と北西航路の航路図

唖然とするヨーロッパ人のために、ロシアは3つの選択肢を示した: 第一に、喜望峰をぐるりと15,000マイルを航行する。第二に、ロシアの安くて速い北極海航路を利用する。第三に、ロシア鉄道を使って貨物を送る。

北極海航路を管理するロスアトムは、アイスクラス(砕氷船)でない船でも夏から秋にかけて航行できるようになり、原子力砕氷船隊の助けを借りて通年航行がまもなく可能になると強調している。

すべてはイエメンの一手がもたらした直接的な結果である。次はどうなるのか?
2024年末にカザンで開催されるBRICS+サミットで、イエメンがロシアの議長国としてBRICS+に参加するのか?

新しい基本設計概念は西アジアで構築される

ジェノサイド安全通行証(用心棒代)作戦のために編成されたアメリカ主導の艦隊は、誕生前に崩壊したが、アンサール・アッラーに恐怖を与えるためとは別に、"イランに警告する"ために編成されたのかもしれない。フーシ派と同様、テヘランはほとんど恐れをなして(言いなりになって)いない。西アジア・アナリストのエース、アラステア・クルックが簡潔にこう言ったからだ:「サイクス・ピコは死んだ」

これはチェスボード上の飛躍的な変化である。つまり、米海軍の"主観の投影"ではなく、これからは西アジアの大国が新たな地域構造を構築するということだ。

このことは、言葉では言い尽くせないが自然に引き出せる結論をもたらす。米海軍の空母機動部隊11隻は、実質的には何の価値もない。

西アジア全域の誰もが、アンサール・アッラーのミサイルがサウジや首長国の油田を攻撃し、稼働を停止させることができることをよく知っている。だから、リヤドやアブダビがイエメンの抵抗勢力に挑戦する米国主導の海上部隊の一員になることを決して受け入れないのも不思議ではない。

さらに、ロシアとイランが保有する水中ドローンの役柄もある。アメリカの空母を狙ったドローンが50機あるとしよう。これでは防御のしようがない。アメリカはまだ非常に先進的な潜水艦を持っているが、バブ・エル・マンデブと紅海を西側の操作員に開放しておくことはできない。

エネルギー面では、モスクワとテヘランは、"核"という選択肢を使ったり、世界の石油供給の少なくとも25%、あるいはそれ以上を断ち切る可能性について、少なくともまだ考える必要さえない。あるペルシャ湾のアナリストが簡潔に表現しているように「それは国際金融システムを取り返しのつかないほど崩壊させるだろう」

まだガザでの大量虐殺を支持する決意を固めている人々には警告がある。イラクのモハメド・シーア​​・アル・スダニ首相はそのことを明言している。テヘランはすでに、イスラエルを支持する国々に対して石油とガスの全面禁輸を要求している。

慎重に計画されたイスラエルへの完全な海上封鎖は、依然として可能性が高い。イスラム革命防衛隊(IRGC)のホセイン・サラミ司令官は、イスラエルは「まもなく地中海、ジブラルタル海峡、その他の水路の閉鎖に直面するかもしれない」と述べた。

ホルムズ海峡封鎖の可能性については、まだ紅海/バブ・エル・マンデブ海峡の話ですらない。

というのも、もしベルトウェイ(ワシントンDCと周辺を囲む環状道路の名前。転じて米国の政府中心部を表す)のシュトラウス系ネオコンがパラダイムシフトに動揺し、イランに"教訓を与える"ために必死になって行動すれば、ホルムズとバブ・エル・マンデブの組み合わせ封鎖によって原油価格が少なくとも1バレル500ドルに高騰し、618兆ドルのデリバティブ市場が崩壊し、国際銀行システム全体がクラッシュするかもしれないからだ。

張り子の虎は窮地に陥っている

毛沢東はやはり正しかった。アメリカは実は張り子の虎なのかもしれない。しかし、プーチンはもっと注意深く、感情を入れず、用意周到だ。このロシア大統領の場合、非対称的な対応がすべてであり、まさに誰もそれを予期していない時なのだ。

そこで、チェス盤上でのアンサール・アッラーの一手を覆い隠す影絵芝居を説明することができる、おそらく最も有力な作業仮説に行き着く。

ピューリッツァー賞を受賞した調査報道ジャーナリスト、サイ(シーモア)・ハーシュが、バイデンチームがノルドストリーム・パイプラインを爆破した方法を証明したとき、事実上、ガスプロム、ドイツ、EU、そして多くのヨーロッパ企業に対するテロ行為であったことに対して、ロシアの反応はなかった。しかしイエメンは今、単純な封鎖によって世界の海運をひっくり返そうとしている。

では、何がより脆弱なのか?
世界のエネルギー供給の物理的なネットワーク(パイプラインスタン)か、それともタラソクラシー(海軍の優位性から権力を得ている国家)か?

ロシアはパイプラインを特別扱いする。例えば、ノルド・ストリームやパワー・オブ・シベリア1号と2号ご覧いただきたい。しかし、覇権国であるアメリカは、"ブリタニアが波を制す"の後継者であるタラソクラシー(制海権)の力を常に頼りにしている。

ブリタニアが波を制す

Britannia Rules the Waves:ブリタニアが波を制す:1798年に描かれたこのカラードローイングは、ネルソン艦隊に対するフランス海軍の惨憺たる実績と、フランスによるイングランド侵略の希望を嘲笑している。ギルレイのスタイルで、グロテスクで巨大な女性が英仏海峡をまたぎ、フランス船に放尿しながら、彼女の三叉矛がフランスを貫き、粉々に砕けて英国に接収される様子が描かれている。

まあ、今はもはや違う。そして驚くべきことに、そこに到達するためには、ワシントンの狂ったような策略とデマを煽るホルムズ海峡の封鎖という"核"のオプションさえ必要としなかった。

もちろん、決定的な証拠はない。しかし、イエメンの動きひとつをとっても、BRICSの3カ国(ロシア、中国、イラン、ネオコンの新たな"悪の枢軸")に加え、BRICS+の2カ国、エネルギー大国であるサウジアラビアとアラブ首長国連邦の間で、最高レベルで調整されていた可能性があることは興味深い。
「もしあなたがそうするなら、私たちはあなたの後ろ盾になる」というように。

もちろん、イエメンの清廉さは損なわれていない。パレスチナを守ることは、彼らの神聖な義務なのだ。

欧米の帝国主義、そしてターボ資本主義は、常にイエメンを食い尽くすことに執着してきた。イサ・ブルーミはその素晴らしい著書『イエメンを破壊する』の中で「インド洋世界の多くの経済的、文化的、精神的、政治的原動力としてのイエメンの歴史的役割は、必然的に剥奪される」と述べている。

しかし、イエメンは征服不可能であり、現地のことわざどおり"命懸け(イエメン・ファタカYemen Fataakah)“である。抵抗の枢軸の一員として、イエメンのアンサール・アッラーはいまや、ハートランドの連結性を再定義する複雑なユーラシア全体のドラマの重要なアクターとなっている。中国の一帯一路構想(BRI)、インド・イラン・ロシア主導の国際南北輸送回廊(INSTC)、ロシアの新北極海航路と並んで、地中海とアラビア半島周辺の戦略的要衝を支配することも含まれる。

これは、アフロ・ユーラシアにおける西側の植民地支配と新植民地支配を粉々に打ち砕く、まったく別の貿易連結パラダイムである。そう、BRICS+はイエメンを支持している。イエメンは、たった一つの指し手でパックス・アメリカーナに"他のどの窮地よりも強力な地政学的な窮地(苦境、難局、ピンチ)“をプレゼントした。

この記事で述べられている見解は、必ずしも Cradleの見解を反映するものではありません。

バブ・エル・マンデブ海峡
バブ・エル・マンデブ海峡

バブ・エル・マンデブ海峡

ウクライナのナチスがヒトラーを支援した国で、西側の我々は今、ネオナチを支援している

ウクライナで、アメリカは我々をロシアとの戦争に引きずり込もうとしている
ジョン・ピルジャー

ウクライナにおけるワシントンの役割、そして政権のネオナチへの支援は、世界の他の国々にとって大きな意味を持つ。

5月3日、ウクライナのアンドレフカで、道路封鎖の攻撃でウクライナ軍のAPCから落下した薬きょうと米国製のミールパックを手にする親ロシア派活動家。写真 スコット・オルソン/Getty

5月3日、ウクライナのアンドレフカで、道路封鎖の攻撃でウクライナ軍のAPCから落下した薬きょうと米国製のミールパックを手にする親ロシア派活動家。写真 スコット・オルソン/Getty

“We in the west are now backing neo-Nazis in a country where Ukrainian Nazis backed Hitler."
ジョン・ピルジャー、2014年

記事全文はこちら (https://www.theguardian.com/commentisfree/2014/may/13/ukraine-us-war-russia-john-pilger)

共産主義からイスラム主義まで、"我々の"敵の名称は長年にわたって変化してきたが、一般的には、西側の権力から独立し、戦略的に有用な、あるいは資源豊富な領土を占領している社会、あるいは単にアメリカの支配に代わるものを提供している社会を指す。

このような邪魔な国の指導者は、イランのムハンマド・モセデク、グアテマラのアルベンス、チリのサルバドール・アジェンデのように暴力的に脇に追いやられるか、コンゴ民主共和国のパトリス・ルムンバのように殺害されるのが常である。

すべてが西側メディアの誹謗中傷キャンペーンにさらされている。── フィデル・カストロ、ウゴ・チャベス、そして今度はウラジミール・プーチンを考えてみよう。

ウクライナにおけるワシントンの役割は、私たちに対する意味合いにおいてのみ異なる。

レーガン時代以来初めて、アメリカは世界を戦争に巻き込もうとしている。東ヨーロッパとバルカン半島がナトーの軍事拠点となり、ロシアと国境を接する最後の"緩衝国家"であるウクライナは、アメリカとEUが放ったファシスト勢力によって引き裂かれようとしている。

ウクライナのナチスがヒトラーを支援した国で、われわれ西側諸国はネオ・ナチスを支援している。

イラクやアフガニスタンの廃墟のように、ウクライナはCIAのテーマパークと化している。CIA長官ジョン・ブレナンがキエフで個人的に運営し、CIAとFBIの何十もの"特別部隊"が、2月のクーデターに反対する人々への野蛮な攻撃を監督する"治安組織"を立ち上げている。

今月オデッサで起こった大虐殺のビデオや目撃者のレポートを見てほしい。バスに乗ったファシストの暴漢が労働組合本部(https://www.theguardian.com/world/2014/may/02/ukraine-crisis-pro-russian-forces-claim-assault-on-slavyansk-live-updates)を焼き、中に閉じ込められていた41人が死亡した。警察が待機している様子を見てほしい。

👉ジョン・ピルジャーが2023年12月30日に亡くなったことで、世界は偉大なジャーナリストを失っただけでなく、計り知れない誠実さ、良識、道徳的勇気を持った人間を失った。

R.I.P

ジョン・ピルジャー

ジョン・ピルジャー

【伊藤貫の真剣な雑談 年末SP】伊藤貫×水島総「アメリカの偽善主義外交の破綻が露呈した2023年!!!」

伊藤貫氏はこの動画の中で、とてもプーチン大統領のことを褒めたたえています。そして、プーチンという人物像について興味深い指摘をされています。それによると、プーチンという人は本心を見せない人なのだそうです。
私は、プーチンという人は、人が人を支配するという長い人類の歴史を根底から覆すことを狙っているのではないかとさえ思っています。
「人が人を支配する」ことを疑問に思わないことが、すべての問題の根底にあるような気がします。それにしても、日本という国は"洗脳大国"だとつくづく思います。

──おわり
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

Posted by kiyo.I